漢方診療日記

第33回 曼荼羅塗り絵 - 気持ちが落ち着く効果

55歳・作家、が不眠で来院した。元々うつ傾向が高校時代からあり、働くようになってからは、睡眠薬を近医内科からもらっていた。しかし、5年前から睡眠薬が効かなくなったという。


睡眠導入剤には、短時間だけ効く、つまり寝入りだけをよくする種類のものと、長く効く、つまり、朝まで効果が持続する長時間タイプがある。入眠困難が主訴の患者さんには、短時間だけ効果がある薬を使う。


「長く効果のある睡眠薬の方が良いのでは」と思われるかもしれないが、違う。長時間持続する睡眠薬は、朝の寝起きが悪く、午前中の患者さんの頭が、「ぼーっ」とすることが多い。


人により薬剤の代謝能力、排泄(せつ)能力が違うため、下手に長時間タイプの睡眠薬を使ってしまうと、次の日一日眠らせることになる。特に高齢者は肝臓の機能、腎臓の機能が低下している場合があり、要注意だ。


作家の先生に話を聞くと、以前は短時間タイプの睡眠導入剤を処方されていたが、そのうち効かなくなり、現在では、長時間タイプが処方されているという。「それでも、眠れない」との主訴で、漢方を飲みたいと来院した。


ひと通りの東洋医学の診察を行った後、「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を処方した。そして、ひと月後の来院をお願いした。


ひと月後、作家先生は来院し、症状を聞くと「前よりもましだが、まだ、熟睡ができない」と言う。そこで、私は「曼荼羅(まんだら)塗り絵」を勧めてみた。私が、大学の授業で使っているタイプの塗り絵だ。


白紙に曼荼羅の枠だけが描いてあり、そこに色を塗っていく。もちろん、好きに塗って良い。「どんな色でも塗って良い」と患者さんに任すのだ。


完成すると、百人いれば、同じ色使いがないことに驚かされる。「うつ」の患者さんは「色を選べない」と言い、白黒の曼荼羅を完成させることがある。枠からはみ出して色を塗る人や、一色しか使えない人など多種多様だ。詳しいことは、曼荼羅塗り絵の本がたくさん出版されているので、参考にされたらいい。インターネットでは、無料でダウンロードできる曼荼羅の下絵もある。


この曼荼羅塗り絵の特徴は、塗る回数ごとに気持ちが落ち着くということだ。月に1回など、定期的に塗ることも勧められている。私が授業で行っている曼荼羅塗り絵は「日経ヘルス」(平成28年10月号 日経BP社)で掲載されている。


作家先生は、漢方で治せない部分を、この曼荼羅塗り絵を繰り返し行ってもらうことで改善できた。自分の感情を他人が観(み)れる形に表現する、つまり、自己表現することで精神の安定が得られた症例だった。

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