漢方診療日記

第30回 お気に入り - 自分の”感覚”大切に

治療が終わっても、診察に来続ける患者さんがいる。何となく不安なのだという。もちろん、病気は治っている。そんな患者さんには、「診察に来なくても大丈夫だから」と、2、3包の漢方薬を持たせて、「調子が悪くなったら服用してください」と言って安心させている。


ある患者さんは、その漢方薬を持ち歩き、人によっては、身に着けると調子が良いという。私は、気のせいだ、と思っていた。


私は某美術大学で、週1回授業を受け持っている。医学を教えている訳ではない。医学と美術の境界領域を教えているのだ。その大学で何年か前、生薬(しょうやく)でシャツを染める実習を学生としたことがあった。自然の生薬は、美しい色を出す。私も煎(せん)じる前の紫蘇(しそ)葉が水に触れた色は、いつも見入ってしまう。青色や黄色で布が染まる。


その生薬で染めたシャツを、あるアトピー性皮膚炎の学生に着てもらった。すると、何となく体調が良いというのだ。本人の感覚だから何とも言えないが、皮膚も何となく調子が良いという。


おそらく、生薬で染められているという情報が、アトピーの学生の安心感を増幅させているのだろう。でも本人は真面目な顔をして、そのシャツを着ると皮膚の調子が良いと繰り返し着ている。


昔、「漢方薬を持つことが健康のお守りになった」という話を聞いたことがある。また、奈良の西大寺では、お札を焼いて食べさせる祈祷(きとう)があると聞いたことがある。


現代医学では、「そんなことは迷信」と一笑に付されるような内容だ。非科学的な話だ。


しかし、お気に入りの色の服を着たり、アクセサリーを身に着けると気分が良いのは、誰でも経験することだ。東洋医学でいう「気」の流れが良くなるということだろう。 自分が嫌いな派手な色や、模様が入った服を着ていると何となく、居心地が悪かったり、気分が乗らなかったりする。人によったらストレスになることもある。これは、流行ではなく、個人の好み、自分に合う色の波長である。人に理解されなくても良い。


これらは、色だけではなく、住む場所やパートナーなど、自分にとって心地良いものを他人に理解させるのは難しい。仕事でもそうだ。人には分からなくても、両親に認められなくても、自分に合った仕事がある。


東洋医学では、漢方薬などの薬を使ったり、気功をさせる以外にも、自分の身の回りの物を整えたり、変えたりして気の流れを良くする方法が、治療としてあるのだ。お気に入りの感覚を大切に。

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