漢方診療日記

第29回 「ポルフィリン症」に悩む女児 - 「母子同服」で改善へ

「ポルフィリン症」という病気がある。先天性の疾患で、詳しいことは専門書に譲るとして、とにかく日光に当てたらだめなのだ。


先天性ということは、子どもの患者も多い。遊びたい盛りの小学生に、「日光に当たらないように遊べ」というのは酷な話だ。特に夏はつらい。日光が強いのだ。秋の運動会の練習や本番もできるだけ、日光の露出を少なくしなければならない。仲間と同じように日なたで遊べないことで、患者も引きこもりがちな子どもになる。


9歳になったばかりの女の子は、東北からはるばるやって来た。母親と祖母に連れられて、私の診療室を訪れたのだ。


ポルフィリン症の治療方法に有効なものはなく、日光を遮ること、まれに脾臓(ひぞう)の摘出が試みられるくらいで決定打はない。


例にもれず、彼女も地方の医学部付属病院で経過観察だけをして、2年が経過していた。検査結果も悪化する一方であったが、現代医学では治療方法もなく、定期検査のみで、積極的な治療はしていなかった。


1カ月に1回行っている検査の数値が悪化することで悩んでいた、とのこと。そんな折、東京の親せきが私の外来患者だったこともあり、上京したのだ。


女児に対して一通り、望診、聞診、問診、切診を行って漢方を処方した。漢方の世界では、例えば、「ポルフィリン症には、この漢方が効く」などの病名に対する漢方を選ばない。証をたてて合う漢方を処方する。だからある人の風邪の漢方薬が、別の人のがんの薬だという場合もある。病名に惑わされない。母親には1カ月後に来院するように伝えた。


ひと月後、女児とその母親がやって来た。今回は祖母はいない。母親はヒステリックに、「定期検査の値が悪いまま変わらない」と訴えた。子どもは下を向いたままだ。


ひと通り、母親の不満、不安、そしてやり場のない怒りの言葉を黙って聞いた。そして母親に、診療椅子に座るように促した。一瞬、戸惑ったが、母親は素直に漢方の診療を受けた。私が、漢方を母親に処方したい旨を伝えると、素直に従った。そして、ひと月後来院するように伝えた。


ひと月後、落ち着いた表情の母親と娘が来院した。「娘の検査結果が改善し出した」というのだ。その後、2年が経過したが、軽快状態にある。


漢方の世界には「母子同服」という言葉がある。子どもを漢方で治療する時に、子どもだけではなく、母親にも同時に飲まさなければならない、という教えだ。母親のストレスが、少なからず子どもの病態に影響しているという教えだ。


今回も、子ども本人の漢方より、母親の漢方が効いたかもしれない。母親と子どもは、見えない「気」でつながっている。

ウェブ限定記事

よく読まれている記事

  • 興福寺中金堂再建記念 現代「阿修羅」展 図録
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • Tour guide tabloid COOL NARA
  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介

奈良新聞読者プレゼント

「大倉陶園100年の歴史と文化」展の招待券

貴賓用特別食器揃(満州国皇帝溥儀を迎えるに際し製作) 1935年 奈良ホテル蔵
提供元:細見美術館
当選者数:5組10人
  • 奈良マラソン
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • バナー広告のご案内
  • 奈良新聞シニアクラブ
  • 奈良新聞デジタル
  • ならリビング.com
  • 特選ホームページガイド
  • 奈良新聞社 採用情報
  • ならどっとFM78.4MHzのご紹介