漢方診療日記

第26回 四肢の顕著な冷え - 血流を良くし気力が復活

老年になると、気力が失われてくるのが普通だ。78歳・会社役員―。


今までは海外に行ったり、休みの日は外出したりするのが好きで、あまり家に居たことがない男性だ。


ところが、外出しなくなった。というか、外出が嫌いになった。家に居ても、家人が黙って暗い中、テレビもつけずにソファに一人ぽつんと座っていることが何度もあり、不安になって病院に行き、検査をしてもらった。


受診した科は神経内科。そこで記憶力テスト、CT、MRIなどの検査をしてもらった。結果は軽度の脳の萎縮(いしゅく)、陳旧性の脳梗塞(こうそく)の既往があるものの、特に異常はないとのことだった。もちろん治療もない。


そうこうしているうちに、部下が離れて行き出した。記憶力が悪いのと若干、感情が出てしまうことで人が離れ出したのだ。


一方、西洋医学の病院でも正常と言われたので、当たり前だが治療法や薬の投与もなく、基本的には「悪くなったら来てください」という対応をされた。


家人は不安になり、人に相談していたという。そのうちに、会社も休職にしなければならなくなった。そこで、私の外来に、人の紹介でやって来たのだ。


漢方は、原因が分からなくても治療に入れる。また、現代医学では病気ではなく、また正常と呼ばれる状態である冷えや老化、軽度の物忘れでも対応できるシステムを持っている。


外来に座った彼は、税理士の資格を持つ有能なビジネスマンだった。食欲はある。便通も良い。ただ、四肢(しし)に顕著な冷えの自覚があった。


確かに、触れてみると冷たい。風呂に入っても温まらないという。「痛い寒さだ」とも表現していた。以前はしていた運動も、体調が悪くなってからは、一切していないとのこと。会社を休職してからは、家に閉じこもりがちになり、身体はさらに冷えたという。おそらく代謝も低下しているのだろう。


このような患者さんは、四肢の血流が悪く、冷えが酷(ひど)いだけではなく、身体の内臓の血管や脳の血管も同じように、以前と比べて血流の問題があるのではないかと想像する。「お風呂に入っても温まらない」とは、この種の患者さんからよく聞く言葉だ。


「牛車腎気丸料(ごしゃじんきがんりょう)」に附子(ぶし)を増量した変方の処方で、様子を見ることにした。


3か月間は著変はなく、ただ、通って来てもらった。そのうち、足の冷えがなくなり、顔の表情もしっかりしてきた。また、会話のレスポンスもよくなり、外出したい気力も出てきたのだ。


やはり身体は一つだ。現代医学のように、整形外科、内科などのように臓器や機能別に分かれていない。足の血流が悪ければ、やはり脳も含めた全身にその傾向がある。


今回、全身の血流を良くすることで、会話の反応が良くなった例だ。

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