漢方診療日記

第24回 人と人との触れ合い - 「気」が交流、相互に影響

漢方の診察には「四診」という作法がある。「望診、問診、聞診、切診」だ。


「望診」は、具体的な顔色や皮膚の変化だけではなく、全体的な印象を重視する。現代医学的な視診ではなく、少し離れたところから雰囲気も望むのだ。


「問診」は、相手の状態をこちらからの質問で答えてもらう。質問内容が大切だ。もちろん相手によって質問は変える。


「聞診」は、文字通り聞くこと。腸の動きは息の音などを聞く。


そして最後は、身体を触る診察を「切診」と言う。「切る」とは物騒だが、相手の気の中に切り込んで、気を読むのだ。


昔の人は、人に触れることで、気の交流がおきると考えていた。人と人が触れることが、現代より大きく考えられていたのかもしれない。気が交わることで、お互いが影響を受ける。


脈を診たり、おなかを触って固さを診る。


32歳・男性―。


生まれた時からの全盲で、診察室に入る時にも介助、誘導が必要だ。看護師の女性に連れられて診察室に入った。椅子の位置も分からないので、看護師が教える。


問診票を見て、ポイントを押さえた。そして腹診のために診察台に横になってもらい、腹部を診察させてもらう。そして次は切診だ。


脈を診(み)た。すると、彼は「蛍光灯が点滅してませんか?」と看護師に聞いたのだ。看護師は「そんなことはない」と答えていた。私は気にも留めなかった。


腹診と切診が終わり、今度は診察椅子に座ってもらい再度、脈を拝見した。


するとまた、彼が「蛍光灯が、今日は点滅しているでしょう?」と聞いてくる。私は、ふと脈診を診ている指を、彼の手首から外してみた。そして、「点滅していますか?」と、私は再度聞いてみた。すると、「点滅しない」と言う。


再度、脈診をしてみると、やはり蛍光灯が点滅しているように感じるのだという。脈診をすると彼は、蛍光灯が点滅しているように感じるのだ。


人と人が触れ合うことで、血流が多くなることは想像できる。そのことで彼が、蛍光灯が点滅していると感じたのではないかと思う。脈診をしているとこのように、人と人が触れ合うことで、お互いが変化するような現象がよく見られる。


現代では、人が人に触れることは、あまり重要視されないが、東洋医学では、人と人が触れ合うことで、お互いが影響を受けることが「気」を介して説明されている。


現代では、単身世帯の増加や引きこもりなど、人と人との距離が伸びている。私は人を直接変えるのは、人でしかないことを診察中、いつも感じている。

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