漢方診療日記

第22回 手術を怖がる - 理性的な判断力を回復

63歳・女性―。


子宮の腫瘍(しゅよう)を指摘され、5年間放置している。5年のうちに腫瘍はどんどん大きくなり、彼女は軽く妊娠しているように見える。


病院に行けば「すぐ手術しろ」、「なぜここまでほっておいたか」と怒られるため、行かなくなった。「東洋医学なら手術しろとは言われない」と思い、知人の紹介で私の漢方外来に、ご主人に付き添われ来院した。


本人が持参したMRIIやCTの画像を見たが、良性か悪性かは分からない。組織検査も受けていない。病院での検査を中途半端で終わっていたため、おなかに大きな腫瘍があるとしか分からない。


なぜ、病院で手術するのが嫌かと聞くと、「怖いからだ」という。


初診時は、私はストレスを取る漢方を出した。その後、2週間後の来院時にも何も言わず、ただ漢方を出しただけだ。その後、落ち着いた脈を確認し、1カ月後、子供を諭すように「命の危機が迫っており、このままでは、腫瘍が破裂したり、出血して貧血になったりする。また、胃腸を圧迫して、腸を巻き込み、便が詰まれば、自家中毒になり、緊急に手術する必要がある」と説明した。


「手術をしろ」と私は、初診時から1カ月間は言わなかった。漢方で恐怖心を取り除き、理性的な判断が出来るようにしてから、説得した。


気持ちは分からなくはないが、1年間のうちに何人かは、「手術をしたくないから漢方で治せ」と漢方外来に来る。彼らも「命が惜しい、助かりたい」と思う気持ちがある。


誰でも悪性腫瘍や癌(がん)と言われれば、動揺する。軽く鬱(うつ)になるのが普通だ。そんな中、患者は医者から「手術の日程を入れます」「化学療法はしますか? 放射線療法はしますか?」等の質問を矢継ぎ早やにされる。質問自体を拒否する気持ちも分かる。


特に、主治医でも効果の是非が分からない、化学療法の副作用やリスクを言われ、自分がやるかやらないかを素人が決めて、治療の同意書を書かなければ治療は進まない。


恐怖心を取り除き、冷静に自分の状態を把握し、現代医学の限界と現在出来る治療法を説明すれば、大抵は治療が進められる。


彼女は子宮の腫瘍の手術に同意し、最初から検査し直し、手術後、メロン大の腫瘍を摘出した。結果は一部悪性化していたものの、断端には腫瘍が無く切除できたようだ。本人の希望で、その後の化学療法はしなかった。それは私も賛成した。


彼女は食事療法と漢方で数年が経つが、遠隔転移は無い。


誰でも急に難病の宣告受けることがある。自分の落ち着いた判断のために、東洋医学を使うこともあるのだ。

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