漢方診療日記

第18回 夜型生活から不登校の日々 - 好みを変える精神状態

17歳・女子高生―。


不登校で来院。母親が同伴来院。私の外来に連れて来るだけで大変だったらしい。


問診は普通にできた。反抗的な態度や、人をバカにしたような態度ではない。「ただ、学校に行きたくない」のだそうだ。いじめや人間関係の苦に関する話はない。


生活は昼過ぎまで寝ていて、母親が用意した食事を食べ、部屋に戻るらしい。朝方に眠り、起きている深夜はインターネットやネット動画を見て過ごすという。


本人は若干の苦痛はあるものの、うつ病のような、苦しさはない。「希死念慮」もない。最近多い症例だ。


本人というより、家族が心配しての受診という印象だ。初診では、話を聞くだけにして漢方は出さなかった。基本的に本人が飲む気にならなければ、処方してもしょうがないと考えている。


また、本人が現状に苦痛を感じていない場合、ほんとに自分が変わりたいかを自分自身に問いかける時間を与えている。本人が変わらなくて良いなら、次回の外来は来ない。


しかし、彼女は来た。服装は若い世代がよく着ている「どくろ、骸骨(がいこつ)」が大きく描かれていた。そういえば初めて来た時も服が「どくろ」だった。どくろの「何が良いの?」と聞くと、「格好が良いから」だそうだ。


「桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」に附子(ぶし)3グラムを加味して処方した。神経質な印象の人に良く効く処方だ。


少しずつ人と接するようになったという彼女はまだ、学校には行けていない。4カ月して彼女は、学校に週3回だけ行き出した。気力が出たような印象がある。ただ、睡眠のリズムは治らず、学校へ行かない日は昼夜逆転したままだ。


夏休みが来た。彼女は親と一緒にアメリカに行くことになった。3週間の滞在後、彼女は外来にやって来た。時差ボケのため、起きたり寝たり、バラバラの生活だそうだ。東海岸だったので時差は、ほぼ昼夜逆転である。


2週間して彼女の生活リズムが、1年半ぶりに正常化した。「時差ボケで睡眠リズムが一旦(いったん)リセットされて、戻った」と彼女は私に言った。


その後、学校にも毎日登校できるようになり、無事卒業できた。


お礼を言いに来た彼女は、ずっと着続けていた「どくろ」がどこかに入った洋服を着ていなかった。


「今まで着ていた服にはどれも『どくろ』が描いてあったね」と私が言うと、格好良いと思わなくなったそうだ。


精神の状態が変わると好みが変わる症例をたくさん診てきた。心は外見に現れると思う。

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