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万葉車窓

大和上市-吉野神宮(近鉄吉野線) - 見飽きることのない河原

 

 『 苦しくも 暮れ行く日かも 吉野川 清き川原を 見れど飽かなくに 』

 残念なことにも暮れていく、今日の日だなあ吉野川。いくら見ても見飽きることはないのに―というような意味の歌だ。清き河原は川をほめるときの慣用句で今も昔も人々から愛される吉野川、ということが分かる。

 吉野川は大台ケ原山系に発し吉野町国樔(くず)で高見川と合流、宮滝、上市、下市を経て五条市へ、和歌山県に入ると紀ノ川となる。県を代表する河川のひとつだ。夕暮れ時、河原ではキャンプをする人や釣りをする人も見うけられる。

 特に初夏のアユ釣り解禁のころや夏のキャンプシーズンには人でいっぱいとなる。そのような人たちの目安になるのが吉野川の近鉄鉄橋だ。大和上市駅と吉野神宮駅の間にかかる大きな鉄橋を電車はゴーッと音を立てながら渡る。その姿を遠望すると空を駆ける鉄道のように見える。

 撮影地点は上市橋周辺。この辺りは警察署や町役場、製材所などがある吉野町の中心部だ。だが、周囲には自然も多く残る。夕暮れが夕闇になるころまで撮影を続けたが刻々と変化する雲の形や空の色、絶え間ない川の流れなどいつまで見ていても飽きることがなかった。

 『 見まく欲(ほ)り 来(こ)しくも著(しる)く 吉野川 音の清(さや)けさ 見るにともしく 』

●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)

 

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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