万葉車窓

郡山―奈良(JR関西本線) - かつての市に暮れる夕日

 

 『 西の市に ただひとり出(い)でて 目並べず 買ひてし絹の 商(あき)じこりかも 』

 西の市は、平城京の東西にあった公営の市の一つで、右京八条二坊にあり、朱雀大路を挟んで東の市と対していた。今の大和郡山市九条町かいわいにあたり、佐保川から運河を開いて物資を運んだといわれている。この歌は、西の市で得た相手が見かけ倒しであったことを後悔する歌、と推測されている。

 奈良市と大和郡山市の境界近くの大和郡山市観音寺町の佐保川堤防から撮影した。ほぼ十分おきに通過するJR関西線の電車。その線路の向こうには、夕日がゆっくりと矢田丘陵に沈み、風景を紅に染めあげた。

 秋の夕暮れは短い。黄色い光に照らされた夕景から真っ赤に染まる日没。そして藍(あい)色の夕闇に溶け込むまで、黄色から赤色、群青色と約1時間にわたって夕暮れの町の景色は変化を続けた。

 『 春日野に 照れる夕日の 外(よそ)のみに 君を相見て 今そ悔(くや)しき 』

●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)

 

写真・文 本紙・藤井博信(日本写真家協会会員)

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