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万葉車窓

大和朝倉-長谷寺(近鉄大阪線) - 心ひきつける細長い清流

 

 『こもりくの 泊瀬小国(おぐに)に よばひせす わが天皇(すめろき)よ 奥床に 母は寝たり 外床(とこ)に 父は寝たり 起き立たば 母知りぬべし 出で行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜は明け行きぬ ここだくも 思ふごとならぬ 隠妻(こもりづま)かも』

=反 歌=
 『川の瀬の 石ふみ渡り ぬばたまの 黒馬(くろま)の来る夜は 常にあらぬかも』

 桜井市脇本を流れる大和川(初瀬川)。ゆるやかに蛇行しながら長谷の集落から桜井市中心部へと流れていく。川の水は澄み、ごみも見当たらない河川敷は美しい。夏草の生い茂る河原に、一足早く赤トンボの群れが飛び回っていた。背後には黒馬ならぬ近鉄電車が見える。かつて旧国鉄の蒸気機関車が最盛期のころ、その躍動感から蒸気機関車のことを「鉄(くろがね)の馬」といわれていた、ということを思い出した。

 泊瀬小国(はつせおぐに)のこの地、桜井市脇本で昭和59年に武烈列城宮(なみき)か、雄略朝倉宮のいずれかではないかと推測される宮殿跡が発掘されている。当時から人をひきつける魅力を持つ細長い渓谷では多くの歌が詠まれている。現代でも、万葉集の時代を感じさせる雰囲気を持ち、人の心をひきつけるようだ。

●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)

 

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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