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万葉車窓

元山上口-平群(近鉄生駒線) - 岩踏み分け越えた生駒山

 

 『 夕されば 茅蝉(ひぐらし)来鳴く 生駒山 越えてそ我(あ)が来る 妹(いも)が目を欲(ほ)り 』

 夏から晩夏にかけて、早朝や夕方に鳴くヒグラシ。「カナカナカナ」と、その声は物悲しい。歌は遣新羅使人(けんしらぎしじん)が、もう一度妻に会いたいとの思いを募らせ、難波で出航待ちの暇を見つけて奈良に帰るときの歌。

 『 妹に逢(あ)はず あらばすべなみ 岩根(いわね)ふむ 生駒の山を 越えてそ我が来る 』

 という歌もある。どちらも、ただ妻に会いたい一心で、岩を踏み分けて入るほどの生駒山を越えている。

 標高642メートルの生駒山は、大阪と奈良を隔てる生駒山地の主峰。山頂には遊園地や放送局の電波塔が林立し、遠くからでも一目で分かる。ふもとの生駒市は緑と町並みの調和した美しい町だ。今回の撮影地点は隣の平群町側から。こちらから見ると生駒山はなだらかな丘のように見える。ヒグラシが鳴くような夕暮れ時、残照に照らされた生駒山頂を背景に目の前を電車が通過した。

●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)

 

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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