万葉車窓

石切-額田駅(近鉄奈良線) - 地上に映える“満天の星”

 

 『 大伴の 御津(みつ)に船乗(ふなの)り こぎ出ては いづれの島に いほりせむ吾(われ) 』

 当時、難波は瀬戸内海を通じて大陸や朝鮮半島と交流の窓口となっていたという。この歌は天平8(735)年に遣新羅使が難波津(なにわのつ)から旅立った際の歌。万葉集には、このほかにも難波津を船で出発した防人の歌もある。送る人や送られる人、さまざまな思いが交差した港だったようだ。

 近鉄奈良線は生駒駅を出ると生駒山を貫く長い生駒トンネルをくぐる。抜けると石切駅。ここから瓢箪山駅にかけて長い下り勾配(こうばい)が続く。石切-額田駅間には眺望の良い場所が何個所かある。ここから大阪平野を見ると、夜なら満天の星空を地上に見ることができる。奈良から大阪へ近鉄奈良線を利用して通勤する人は多いが、その人たちにとって一番なじみの深い大阪の夜景かもしれない。

 撮影地点は同駅間にある都市型リゾートホテル「セイリュウ」から。地上70階相当にもなる高さからの光景は、まさに絶景。昼間ははるかかなたに見えるビルなどの町並みだが、日が沈むと街の明かりは手が届きそうなぐらい近くに見えるのが不思議だ。

 『 昔こそ 難波田舎と 言はれけめ 今は京引き(みやこひき) 都びにけり 』

 

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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