命運はダイヤが握る-新開発カッター使用決定
明日香村阿部山の特別史跡キトラ古墳(7世紀末〜8世紀初)の壁画が劣化している問題で、文化庁の保存活用等調査研究委員会のワーキンググループ(座長・巽淳一郎奈良文化財研究所都城発掘調査部副部長)が10月31日、東京都の東京文化財研究所で開かれた。石室内に残っている四神像「朱雀」などを剥ぎ取り方法が議論され、新たに開発した「ダイヤモンドワイヤー・ソー」を使って行うことを決定。11月中に開かれる本委員会で承認が得られれば、壁画の余白部分で実効性を試した後、早ければ来年3月末までに十二支像の寅、朱雀の順で剥ぎ取る。
ダイヤモンドワイヤー・ソーは、ダイヤモンドの粉末をまぶした鉄製ワイヤーの電動カッター。四駆用ラジコンカーのモーター2台でワイヤーを秒速4メートルの速さで駆動し、石材から漆喰(しっくい)面を剥(は)ぎ取る。重さは1キロ強でカッター部の長さは20センチから1メートル。ワイヤーは半導体基盤の切断用のもので、直径0.43ミリ、長さは約300メートル。
同研究所が今年2月から開発を進めてきたもので、これまでに約20回実験。この日、ビデオで公開された実験では横約45センチ、縦約20センチの漆喰を約30分で剥ぎ取ったという。
ワーキンググループでは、川野邊渉・東京文化財研究所修復技術部修復材科研究室長がダイヤモンドワイヤー・ソーの説明を行った後、各委員が剥ぎ取り方法を議論。先月の本委員会で一部の委員から提案された南壁を取り外して石材ごと壁画を切り取る方法も議論されたが、「石室内の環境が変化しカビの大量発生を招く恐れがある」などの異論が相次ぎ、ダイヤモンドワイヤー・ソーを使用する意見が大勢を占めた。
ただ、切断面が平面でなければ使用が難しいため、天井に描かれた天文図については今後、技術的な応用方法を検討していく予定。
川野辺渉・東京文化財研究所修復技術部修復材科研究室長は「現場の希望としては、劣化の状況を考えると壁画の剥ぎ取りは早ければ早い方が良い。できれば側壁は来年3月末までになんとかしたい」と話している。
(2006.11.01 奈良新聞)
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東京文化財研究所が壁画の剥ぎ取りために、新たなに開発したダイヤモンドワイヤー・ソー=文化庁提供 |