「寅」はぎ取り中止-漆喰固着し損傷の恐れ
壁画の劣化が進んでいる明日香村阿部山のキトラ古墳(7世紀末〜8世紀初め)で、文化庁は1月17日、この日はぎ取る予定だった東壁の十二支像の寅(とら)の胴体など本体部分について、急きょはぎ取りを断念した。絵の描かれている漆喰(しっくい)が石壁に固着し、はぎ取る際に損傷する恐れがあるため。はぎ取りが困難な天文図(天井)や朱雀(南壁)に加え、壁画保存対策に新たな課題が生じた。
寅の本体部分をはぎ取る前に、絵の右上の余白部分をはぎ取ったが、漆喰が非常に固く、ヘラが石壁との間に挿入しにくい状況だった。ヘラ以外に針状のものを使って、少しずつはぎ取ろうとしたが、表面に亀裂が入るなどうまくいかず、はぎ取った後は、一部がばらけてしまった。
これを受け同庁は、本体部分も漆喰が固着している可能性があり、余白部分と同様の結果を招く恐れがあると判断。本体部分のはぎ取りを見送った。新たな対策が見つかるまで、作業再開のめどは立たないという。
作業を統括する東京文化財研究所の川野辺渉修復材料研究室長は「漆喰は石のような固さ。この状態で作業をすれば、壁画を傷める可能性があり、現状のままでははぎ取りは難しい」と厳しい表情。「今後、ヘラなど道具を改良し、技術開発を図りたい」と話している。
寅のほか、まだ石室内に残っている天文図は漆喰が粉状化し、朱雀は漆喰が非常に薄い状態。はぎ取りは困難な状況にあり、石室の部分解体案も含めた修復保存対策が検討されている。
(2006.01.18 奈良新聞)
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