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やまと建築詩

料理旅館百楽荘(奈良市)

日・中・英の様式が調和

 中国・福建省にあったと伝えられる門を模した「長寿門」で知られる料理旅館「百楽荘」。近鉄奈良線の学園前駅と富雄駅の間にあり、周囲が住宅に囲まれた広い敷地内に個性的な数寄屋建築が10棟ほどたたずんでいる。

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▲雨のなか照明に浮かぶ長寿門は百楽荘の顔。
中国・福建省にあった門を模したもので、茅ぶき八角形の独特な形

 昭和8年に松林約26万4000平方メートルを購入した大阪の資産家・泉岡宗助さんにより建設された。設計にあたっては、泉岡さんがすべてを考案し大工の棟梁が建てた。同氏が経営する材木店の銘木を使うなど凝ったものに仕上げられた。

 建設当時は敷地内に15棟の建物が並んでいた。一戸建て貸切別荘風建屋の装いといわれ、各戸が特徴を持った外観を持つ。日本の古建築、洋風、中国風などを組み合わせている。また傾斜地をあえて使い、いわゆる吉野建てのように2階に玄関のある建物や、建物の中に段差をつけたものなど、高低差を有効に使い、非日常的な空間を演出している。敷地内には現在10棟の建物が残る。昭和32年に泉岡さんの会社、泉屋土地建物から近鉄観光が引継いでいる。

▲百楽荘を建てた泉岡さんが好んだ建物「姫百合」。
古材などを用いた数寄屋造りの客間など見どころも多い

▲昭和初期の和風建築ながら
天井が高く広々とした前室

▲七宝焼の金物など
凝ったデザインの多い
「姫百合」。書院には
螺鈿を用いた透かし欄間も


▲柔らかな光が入る書院


 四季、花が咲き誇る百楽荘では建物の名前も花の名前をつけている。ここで一番人気があるのは、昭和を代表する建築家、村野藤吾さんがお気に入りだった「姫百合(ひめゆり)」。村野さんは泉岡さんと親交があり百楽荘を「自らの和風建築の原点である」と考えていたという。

 螺鈿(らでん)による書院の透かし欄間や前室にある七宝焼の金物を使った換気口など細かな部分も凝っている。天井も高く、和洋の特徴をうまく組み合わせた部分も多い。

 「長寿門」は「この門をくぐると長寿が約束される」という中国の門を模した。くぎを使わずに、クリの木を八角堂に組み上げて、欄間にはケヤキを使用。屋根は茅(かや)ぶきという手の込んだ建物。よく見ると、日本と中国、英国の古風なデザインが調和している。また、真ん中が門になっているのも大きな特徴。



DATA

● 料理旅館百楽荘 ●

奈良市百楽園3丁目1―3

建物だけの見学はできないが料理旅館として各種会席料理を楽しめる。食事の後には昭和初期の山荘建築が並ぶ敷地を散策でき、四季折々の花が美しい。

営業時間は昼が午前11時半から午後3時まで。夜は午後5時から同10時まで。前日までの予約が必要。

情報が古くなっている場合がございますので、ご利用の際は必ず事前にお問い合わせください。

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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