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万葉車窓

吉野口-北宇智(JR和歌山線)

列車がつなぐ未来と過去

大和朝倉―長谷寺(近鉄大阪線)

『 たまきはる 宇智の大野に 馬並(な)めて 朝踏ますらむ その草深野 』

 宇智野は、現在の五條市、JR和歌山線北宇智駅周辺の近内町付近から市街地にかけての一帯の山野をさす。この歌は、舒明天皇が宇智の野で遊狩(みかり)をされた時に、中皇命(なかつすめらみこと)が間人連老(はしひとのむらじおゆ)をして献上させた長歌にあわせた反歌。

 中皇命は誰かというには、いくつかの説があるが、舒明天皇の皇女で中大兄(なかのおおえ)の妹の間人皇女(はしひとのひめみこ)ではないかともいわれ、神々と天皇との間にあって祭祀(さいし)をつかさどる女性だったともいわれている。

 国道24号で風の森峠を下ってくると、視界が開けるところがある。金剛山の山並みを背景に田園地帯が広がるこの風景に、宇智野を彷彿(ほうふつ)させることができる。この地は交通の要所ともなり、東から国道24号、JR和歌山線、そして今春、一部供用開始となる京奈和道の五條道路のコンクリートの白い高架が見える。

 よく晴れた撮影日、西の空に夕日が沈んだ。残照が辺りをうっすら浮かび上がらせる。遊狩の一行と出会いそうな万葉の昔を思わせる風景に、未来の象徴でもある五條道路が一本の線を描く。未来と過去をつなぐように、重阪峠を下ってきたJR和歌山線の普通電車が一条の帯のように流れた。


●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)


写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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