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万葉車窓

帯解―櫟本(JR桜井線)

恋心まで照らす月明かり

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『 月夜(つくよ)よみ 門(かど)に出(い)で立ち
              足占(あうら)して ゆく時さへや 妹(いも)に逢はざらむ 』

 美しい月夜の夜なので、門に出て「足占(あうら=占いの一種)」をして出かける時さえも、いとしい人に会えないのだろうか、という意味の歌。万葉の時代、逢引(あいびき)は月夜の夜にしかできかった、ともいわれ、足占いで「会える」と出ても会えないこともあったようだ。この歌は男の歌だが、会いたいのに会えない切なさが伝わるようだ。

 また、当時は灯(あか)りはほとんど無く、闇夜だと歩くのにも一苦労だったようだ。そのため、夜は家にいることが普通だった当時、暗闇を照らす月の明かりは、万葉人の心も照らす明かりだったとも言える。満月に照らされた道を、いとしい人のもとへ急ぐ。そんな風景が目に浮かんでくる。

 撮影地点は奈良、大和郡山、天理の三市の境界線近く。奈良市池田町の広大寺池南側の水田で撮影した。このあたりは、古代の土地制度「条里制(じょうりせい)」による土地区画整備の痕跡を残す場所として知られている。夕方、太陽が姿を消し、暗闇となった。風にゆれる稲穂の音だけが聞こえる。やがて、東の空の雲の切れ間から満月に近い月が顔を出した。


●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)


写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)


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