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万葉車窓

吉野口駅-北宇智駅(JR和歌山線)

紀伊へと続く細長い谷

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 『 わが背子を こち巨勢山と 人はいへど 君も来まさず 山の名にあらし 』

 待っていたのにあなたは来なかった―。巨勢(こせ)と「来せ」を重ねた、しゃれた歌といわれる。この巨勢山は、現在の御所市古瀬(こせ)のあたりの山で、特定の山ではないともいわれている。

 古瀬の地は大和盆地が尽きる細長い谷間のような地形で、万葉のころは、飛鳥や奈良から紀伊への通り道となっていた、という。現在、ここをJR和歌山線が走っている。

 JR王寺駅と和歌山方面を結ぶこの路線は、近鉄との連絡駅でもある吉野口駅を和歌山方面に向けて出発すると、曽我川上流の重阪(へさか)川に沿って谷間を走り、やがて視界が開けると宇智野とよばれたあたりを通る。関西唯一のスイッチバックの駅として知られる北宇智駅に、そして五條方面へと進んでいく。

 写真は、吉野口駅から南へ少し行ったところ。古瀬の町並みから同市奉膳(ぶんぜ)の水田へ出たあたりで撮影した。県道を挟んでJRと近鉄線が並び、近鉄薬水駅はすぐ近く。御所市と大淀町の境界線近くでもある。谷間の水田には稲の青い葉が風にゆれるなか、和歌山線の電車が走り去った。細い谷は今も昔も人々の通り道となっている。

 『 ただに来ず 此(こ)ゆ巨瀬道(ぢ)から 石橋(いははし)踏み なづみそわが来(こ)し 恋ひてすべ無み 』


●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)


写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)



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