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やまと建築詩

名勝庭園依水園 茶室「氷心亭」(奈良市)

庭園の緑まぶしい茶室

 総面積1万3481平方メートルに及ぶ池泉回遊式庭園で、明治期を代表する庭として昭和50年に名勝指定を受けた「依水園(いすいえん)」。その名は、万葉集に詠まれた吉城川の水に「依(よ)」っていることと、杜甫の詩に「名園依緑水」という一節があり、それを引用したとも伝えられている。

▲12畳広間の縁から見る後園。大きなガラス窓が開放的だ

 庭園は入り口右側の「前庭」と東側にある「後園」の二つがある。前庭は興福寺摩尼珠院(まにしゅいん)の別荘があった場所とされ、江戸時代の延宝年間(1670年代)に奈良晒(さらし)業者の清須美道清氏が別邸を設けた。「後園」は明治32年に奈良の富商、関藤次郎氏の気宇をくみ、裏千家十二世叉斎が造り上げた庭と伝えられている。東大寺南大門や若草山、春日奥山、御蓋(みかさ)山を借景に取り入れた庭園には茶室や柳生から移した「柳生堂」などの建物が建つ。

 これらの庭園は昭和14年に中村準策氏に所有が移る。同氏は、神戸で財を成し、収集美術品を展示する財団法人を設立し、美術品を鑑賞する環境を兼ね備えた美術館を建てる構想をもとに購入した。ただ、美術館は第2次世界大戦により延び、昭和45年に準策氏の孫の準佑氏により開館した。

 氷心亭は、後園が完成したころ、明治30年代に建てられた。8畳と12畳の広間と6畳の茶室からなっている。12畳広間は、天井が平天井と舟底天井、掛け込み天井が組み合わされたもので、新薬師寺の古材が用いられている。また、「桂離宮」の書院の一部を写した床の間も。

 8畳は床柱がモミジ材で、表一面に天然の絞(しぼ)がある。また、西側の窓上には三笠山を模した欄間(らんま)が特徴的。庭園に面した六畳の茶室は半畳を床に使っている。いずれの部屋にも炉が切られ、茶室として使用できる。特に12畳広間では、奈良を訪れた皇族や海外の要人らが茶を楽しんでいるという。


▲茶室は南西隅に半畳の床を設置。
竹を使った天井や新薬師寺の古材を用いた濡れ縁など凝った造りに

▲8畳の西側窓上には三笠山をモチーフにした欄間が

▲名勝庭園依水園の庭にひっそりとたたずむ氷心亭。
緑の森にヨシズぶきの屋根が映える



DATA

● 名勝庭園依水園、氷心亭 ●

奈良市水門町74

※茶室など建物の見学は外観のみ。
※開園時間は午前9時半から午後4時まで。
※休園は毎週火曜日と年末年始、盆休み。
※園内では有料で抹茶が楽しめるほか予約制で食事もできる。
※茶室は茶会などで使用可能。

【問い合わせ】
 財団法人寧楽美術館(樋口隆康理事長、中村記久子館長)
   電話:0742(25)0781

情報が古くなっている場合がございますので、ご利用の際は必ず事前にお問い合わせください。

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)


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