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万葉車窓

六田駅(近鉄吉野線)

「櫂の水しぶき」輝く七夕

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 『 この夕(ゆうべ) 降り来る雨は
       彦星(ひこぼし)の 早漕(はやこ)ぐ船の 櫂(かい)の散りかも 』

 雨が降る七夕の夜、雨つぶは彦星が織り姫に会うために急いで漕ぐ櫂の水しぶきだろうか、という意味の歌。年に一度の七夕の夜、あいにくの雨ながら美しい歌にしている。

 彦星(牽牛=けんぎゅう)と織り姫(織女=しょくじょ)が年に1回、7月7日の七夕の夜に天の川を渡って会う、という七夕の話は、中国から伝えられた。万葉集のころ、7月といえば初秋のころだった。今、七夕といえば夏。ことしもあと3週間あまりでやってくる。七夕といえば、梅雨の真っ最中でもあり、ことしの七夕も彦星の櫂の水しぶきが天から降ってくるかもしれない。

 撮影地点は近鉄吉野線の六田(むだ)駅。交換待ちの急行電車の窓に、対向する特急電車の明かりが雨粒ににじむ。駅の脇には吉野川が流れるが、この駅周辺は、吉野山や大峯に入る修験者が利用した「柳の渡し」でにぎわった場所。彦星ではないが、川を渡る船の櫂の水しぶきが輝いていたに違いない。

 『 かはづ鳴く 六田の川の 川楊(かはやぎ)の ねもころ見れど 飽かぬ川かも 』



●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)


写真と文 藤井博信


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