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万葉の景色

法華寺 =不比等邸宅跡=

女性のための修法道場

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↑端午の節句を彩るハナショウブ、中でもキショウブは一際艶やか。カキツバタなどとともに5、6月に花開く=平城宮跡(奈良市)

←手入れの行き届いた庭園に映え、妖艶な美しさが漂うカキツバタ=法華寺(奈良市)


 『 いにしへの 古き堤は 年深み 池のなぎさに 水草生ひにけり 』(巻3―378)

 律令国家の礎を固めた藤原不比等(659~720)の死後、邸宅は次第に荒廃していく。没後訪れた山部赤人は、「池は年を経て水草が乱れ伸びている」と感懐を歌に残した。が、のちに不比等の娘・光明皇后が邸宅跡に総国分尼寺(法華寺)を建立。東大寺の総国分寺に対する女人のための修法道場として、土塀をめぐらし気品をたたえ「法華滅罪之寺」と称し隆盛を極めた、という。

 本堂をはじめ現代の諸堂は豊臣秀頼の母淀君によって整えられた。本尊十一面観音像(国宝)は、光明皇后がモデルといわれ官能的な仏さまとして知られる。春と初夏、秋に開扉される。また、護摩の灰を粘土に混ぜて指先で犬の形にし、彩色した愛らしいお守りは安産を願う人々に喜ばれている。この時期、庭園ではカキツバタが艶(つや)やかな紫色の花をつけ、心安らぐ。客殿とともにきょう22日まで公開されている。園内には久我高照門跡が筆をとった歌碑も。

 訪れた日はあいにくの空模様。それでも雨にぬれたカキツバタは緑に映え、肉厚な大ぶりの花びらは妖艶(ようえん)な美しさが漂い際立っていた。

 さて、万葉集にはカキツバタを詠んだ歌が七首あり、いずれもがその美しい花を題材に詠んでいる。

 『 杜若(かきつばた) 衣に摺りつけ ますらおの
                きそひ狩する 月は来にけり 』
 大伴家持(巻17―3921)

 カキツバタの花を使い、衣装を染めた万葉人。鹿の角を切ったり、薬草を摘んだりする季節到来。斬新な“万葉ファッション”で決める男たち、恋が芽生えることも…。今も全国各地で自生するカキツバタ、姿形が似たハナショウブやアヤメなどとともにこの時期、美しい花が咲く。2010年、平城遷都1300年という節目の年に完成を目指す大極殿正殿復元現場近く、平城宮跡を南北に貫く水路脇ではキショウブが花開き、これも艶やかだ。


写真と文 牡丹 賢治


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