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万葉車窓

大和朝倉-長谷寺(近鉄大阪線)

緑濃い「いにしえの」時間

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 『 こもりくの 泊瀬(はつせ)の山の 山の際(ま)に いさよふ雲は 妹(いも)にかもあらむ 』

 桜井市の東部、現在の地名、桜井市初瀬(はせ)を万葉人は泊瀬(はつせ)とよんでいた。「隠口(こもりく)」の枕詞(まくらことば)で、さながら大和平野から見れば山の向こう側にある隠れ里のような地だったようだ。

 初瀬川をはさむ細長い平地の北には三輪山から初瀬山にかけての山並みが、南は鳥見山や忍阪(おさか)山などの山並みが続く。初瀬山には朱鳥元(686)年に川原寺の道明上人が、天武天皇の病気平癒のために「銅板法華説相図(どうばんほっけせっそうず)」を境内西の岡に安置したことなどを縁起とする真言宗豊山派の総本山長谷寺がある。

 桜井市内方面から初瀬川に沿って昔は初瀬詣で、伊勢詣でで親しまれた道、泊瀬道が通る。現在は国道165号が東西の交通を担う。近鉄大阪線は長谷寺駅付近は初瀬川南の山の中腹を走るいわば交通の要所でもある。

 初瀬山から三輪山にかけて連なる山々には針葉樹の濃い緑色と新緑の鮮やかな緑色とが鮮やかなコントラストを描くなか、近鉄電車は走る。秒単位で組まれる列車ダイヤだが車窓には万葉の時代と変わらない四季のゆったりとした時間が流れる。


●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)


写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)



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