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万葉の景色

葛城山

力強い姿、今も昔も

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▲ヤナギの大木が芽吹き、新芽があでやか。
名残のサクラが初夏を思わせる日差しに輝く
(葛城山麓公園、葛城市寺口)

 『 春楊(やなぎ=柳) 葛城山に たつ雲の 立ちてもゐても 妹をしぞ思ふ 』
  柿本人麻呂歌集(巻11~2453)

 大阪との府県境にどっかりそびえる葛城山(標高959m)。比較的低い山が連なる東の青垣の山々に対し、西に連なる葛城・金剛の山並みは堂々と力強い。雲が次々と立つように、何かにつけあの人(恋人)のことが思われる。ヤナギを輪にして頭に飾り、鬘(かずら)にしたことから「春楊」は、葛城を導き出す言葉だが、みずみずしい植物の生命力を身体に取り入れようという願いが込められ、いかにも恋しい人を思う気持ちが伝わる。

 サクラの花に気をとられ、どこのサクラが見ごろ、いや満開と心躍らせているとヤナギも芽吹き、新芽が出そろった今、緑燃え際立つ。万葉に登場するヤナギは大半が中国原産のシダレヤナギと思われるが、日本に渡ってきたのは随分古いらしい。都のあちこちに植えられ、万葉人にはなじみが深いようで36首という多くの歌に登場する。枝先を折り髪に飾ったり、手に持ち得意げに歩いていたようで、当時それが風流だったに違いない。

 さて、「葛城」と聞き連想することは? 最近の出来事から。葛城山から金剛山の麓(ふもと)一帯は4世紀末から5世紀にかけ、葛城氏が拠点とし栄えていた。古代豪族は謎めいている。そんな中、御所市極楽寺で濠(ほり)と塀に囲まれた大型建物跡が見つかり話題になったことは記憶に新しい。大和盆地を一望できる丘陵上にあり、中核的な政治施設と見るのが自然だ。目と鼻の先、「二光廃寺」と名づけられた寺院跡からは200点ものせん仏も見つかっている。

 平成の大合併で新庄町と当麻町が一つになり、昨年10月「葛城市」が誕生した。県で11番目の市として発展を遂げようとしている。旧新庄町、近鉄新庄駅西側に柿本人麻呂を祀(まつ)る柿本神社がある。出生地と伝えられる場所の一つで、春楊…の歌碑もある。寺口忍海古墳群の一角、大和平野の眺望が楽しめる葛城山麓公園にあるヤナギの大木は新芽が春風になびく。葛城山が一望できる市民の憩いの場、屋敷山公園は春咲きの草花が美を競う。葛城山上は間もなく一面ツツジの花に覆われる季節を迎える。

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▲満開のシダレザクラが春らんまんを告げる。
葛城山系の山並みが背景に広がる屋敷山公園(葛城市南藤井)

写真と文 牡丹 賢治


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