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万葉の景色

奈良山

羽の色に込めた恋心

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▲国の内外から珍しい鳥が集い、気軽に観察できる「野鳥の森」。
全身朱赤で目を引くショウジョウトキは
国内最多の48羽飼育されている(奈良市左京)

 2005年、酉(とり)年が始まった。自身、未熟な部分を「トリ」除き、他人の良い部分を「トリ」入れ、飛躍を―。抱負を胸に新春第一回は世界各地の鳥を放し飼いにしているユニークな施設「野鳥の森」(奈良市左京)を訪れた。日本の風土、四季の美を詠んだ「万葉集」には、カモやキジ、チドリ、ホトトギス、シカなど鳥や動物が110数種類読み込まれている。野鳥の森は平成3年、平城ニュータウンの一角に開園。約2200平方メートルの土地に高さ20数メートルのネットを張り巡らせ、入館者はゲージ内に入り、カモ類をはじめキジ科のシロクジャク、全身朱赤で目を引くショウジョウトキなど15種類250余羽を身近に観察できる。

『 みづとりの 鴨の羽色の 春山の おぼつかなくも 思ほゆるかも 』 笠女郎(巻8~1451)

 カモは県内でも池や古墳の堀などで見られるポピュラーな渡り鳥。穏やかな日を浴び、水辺で羽根を休める姿は冬の風物詩の代表格。みづどりの…は、女郎が大伴家持に恋焦がれ詠んだ全29首の内の1首。カモの羽根のような春山の緑がきれいになったというのに、あなたの気持ちはまるで霞みがかかった春山のよう、ともどかしさをしたためた。さて、平城ニュータウンは奈良市北部に広がる住宅地で万葉の時代、奈良山と呼ばれたあたりに近い。ただ、山とは名ばかりで丘陵のようで、一帯は木々が茂り今なお自然が色濃く残る。

『 君に恋ひ 甚(いた)も術なみ 奈良山の 小松が下に 立ち嘆くかも 』  同(巻4~593)

 もちろん、これも家持へささげた恋歌。あなたのことを考えると何も手につかない毎日。奈良山へ来て泣いてばかり…。当時、ここから家持の邸がある佐保を見つめていたのだろうか、簡潔な表現だが気持ちが伝わる。家持から女郎への歌は2首のみ、なんとも素っ気ないが、片思いなら致し方ないか複雑だ。一条通の北、奈良高校の西隣に鎮守する狭岡(さおか)神社(奈良市法蓮町)に万葉歌碑がたたずむ。鳥居をくぐり、木立に囲まれた長い石段の途中にあり、万葉の時代を彷彿(ほうふつ)する静けさが漂っていた。

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▲笠女郎が大伴家持にささげた万葉歌全29首の一つ
「君に恋ひ…」と詠んだ歌を刻んだ碑が建つ狭岡神社
(奈良市法蓮町)


写真と文 牡丹 賢治

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