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万葉の景色

御蓋(三笠)山

世界遺産の黄葉の山

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▲紅葉が彩る御蓋山。目を凝らすと水面も赤みを帯び、
趣がある(奈良市の奈良公園鷺池から望む)

 『 大君の 三笠の山の 黄葉は 今日の時雨に 散りか過ぎなむ 』 大伴家持(巻8-1554)

 春日大社の背後にそびえる標高283メートルの御蓋(みかさ)山は、笠(かさ)を伏せたような形から三笠山とも。すぐ背後、花山を頂きとする春日山の一峰だが、奈良公園内の鷺(さぎ)池や飛火野辺りから見ると、独立した峰のように見える。ただ、北隣にあり、山焼きで“全国区”の若草山と混同されることもしばしば。

 が、古来から春日大社の神域として手厚く保護されていたため、草原の若草山とは対照的に古木が残り、今も春日山原始林として世界文化遺産にも登録されている。原始林を挟んで若草山、高円山と大和青垣を代表する山を結ぶ「奈良奥山ドライブウェイ」の春日奥山コースはあえて舗装せず、さらに一方通行という個性派。自然を保護するための手段だろう。木々に覆われ、紅葉も美しい。家持の歌も晩秋の時雨に散る行く黄葉を惜しんでいる。

 春日野や春日山と同様、万葉人の心のよりどころだったことがうかがえる。「春日なる 三笠の山に・・・」(巻10-1887)で月を愛で、「・・・三笠の山に いでし月かも」(「古今集」巻91406)と遣唐使として唐に渡った阿倍仲麻呂が、望郷の思いを詠んだ。話を戻そう。今も昔も紅葉を愛(め)でることは大きな楽しみだが、万葉の時代、紅葉より黄葉が主流だったらしく、「もみち」を題材にした歌の大半が黄葉の文字を用いている。

 ちなみに地名の分かる歌は、春日山の7首がトップ。三笠山は3首。現在、県下で黄葉の名所というと奈良市郊外の正暦寺や桜井市の長谷寺、談山神社などに限られるようだ。1日現在、奈良新聞に掲載の紅葉だよりは「みごろ」が目白押し。この日、奈良市では今季一番の冷え込みとなり、初霜が観測された。奈良地方気象台によると「平年より22日遅く、観測史上で最も遅い」という。紅葉の季節から落葉、木枯らしの季節がやってくる。

 きょう5日は、奈良公園一帯で「奈良春日・大仏マラソン」が開かれる。スタート・ゴールになる春日野園地の脇、宜寸(吉城)川沿いの紅葉が真っ赤に染まり艶(つや)やか。どうかこの好天のまま5000人を超えるランナーを迎えられればと願う。コースから御蓋山も見え隠れする。

▲黄葉が舞い、ススキがなびく若草山頂付近から見た晩秋の御蓋山


写真と文 牡丹 賢治

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