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万葉の景色

因可の池(よるかのいけ)

巻向の川

▲無縁仏が野池に張り出すようにたたずみ、静かに観光客を迎える。
斑鳩の里には今も多くの池があるが、
因可の池の所在は定かではない(斑鳩町法隆寺)

 わが国初の世界遺産に登録された法隆寺や法起寺(法隆寺地域の仏教建造物)をはじめ法輪寺や中宮寺が建ち並ぶ斑鳩の里。秋の訪れとともにハイカーらでにぎわう。

『 斑鳩の 因可の池の よろしくも 君を言はねば 思ひぞ吾がする 』
  作者不詳(巻12―3020)

 恋人のよくない噂(うわさ)を耳にし、心配と思い悩む女性の心情をつづった。あるいは、思いあこがれる男性が、つれないと悩む女性の心内を詠んだと解釈は分かれるが、古代史に欠かせない斑鳩の地名が登場する唯一の歌。法隆寺をはじめ聖徳太子ゆかりの古刹が多いだけに、万葉にしばしば名を連ねても不思議ではない土地柄と思うが…。

 「因可(よるか)の池」の所在も定かではない。法隆寺の境内にある池とか、法起寺の近くにある池などいろいろな説がある。斑鳩には今も多くの池があり謎は深まるばかり。

 世界最古の木造建築として名高い法隆寺。そのシンボル五重塔をはじめ日本最古最大の三重塔が残る法起寺、さらに昭和50年に再建された法輪寺三重塔を合わせ“斑鳩の三名塔”が田園風景のなかに点在。古(いにしえ)の時代に誘ってくれる。

 この時期、休耕田や野辺にコスモスが咲き始め、かれんに美を競う。中でも法起寺周辺は一面を覆い、古塔を借景に一幅の絵のように美しい。見ごろは例年9月中旬以降。秋の深まりとともに稲穂も黄金に色付き、万葉に詠まれた彼岸花が田の畔(あぜ)などで真っ赤な花をつけ彩りを添える。どこか忘れ去られた日本の原風景に出会えるかも。時間をかけ、のんびりと歩きたい。

▲古塔を背に早咲きのコスモスが揺れる(斑鳩町岡本)


写真と文 牡丹 賢治

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