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万葉の景色

梅花の宴(月ヶ瀬梅渓)

浅い春に清楚な香り

▲早春、いち早く咲き出す梅。
清楚な香りとともに粛とした美しさに引きつけられる(月ケ瀬村)

 およそ4500首ある万葉歌の中で、花が題材の歌は1500首。実に3分の1を占める。その美しさで人々を喜ばせ、心癒やしたのであろう。そんな中、早春を迎え、いち早く咲く梅は119首も登場し、142首の萩(はぎ)に次ぐ第2位。

 自生種もあるようだが、一般的には中国から渡ってきたと考えられる梅。中国大陸に修行に出た僧侶や遣唐使が持ち帰ったものであろうが、万葉人も関心を示したことは容易に想像できる。晩年、九州・大宰府で過ごした大伴旅人が天平2(730)年1月、自宅で催した「梅花の宴」は有名だ。

 大宰府や九州諸国の官人らが招かれ、30を超える歌が詠まれた。ただ、旅人の歌は都を離れて、見ず知らずの土地に赴任させられた孤独感が垣間見れる。

『 わが園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも 』 (巻5―822)


 梅の花が白く舞い散るさまを、雪に見立てているわけだが、中国の「梅花落」にならったものといわれている。三寒四温を繰り返し、春本番を迎えるのは今も昔も同じこと、寒さが残る中、ぽつんと咲く梅に自らを映したようだ。

『 春されば まづ咲く宿の 梅の花 独り見つつや 春日暮さむ 』 山上憶良(巻5―818)


『 霞立つ 長き春日を 挿頭せれど いや懐しき 梅の花かも 』 小野氏淡理(巻5―846)


 大和路には月ケ瀬(月ケ瀬村)や賀名生(西吉野村)、広橋(下市町)、追分(奈良市)など名だたる梅林がめじろ押し。中でも木津川上流の渓谷沿い4kmに約1万本の白梅や紅梅が美を競う月ケ瀬はスケールが大きく絶景。元久2(1205)年、村内の真福寺境内に植えられたのが起源だが、松尾芭蕉はじめ多くの文人らが称賛したことで知られている。今月末まで「梅まつり」が開かれている。

 桜の華やかさとは一味違った、凛(りん)としたまだ春浅い空気の中、清楚(せいそ)な香りとともに一輪また一輪と咲く粛とした美しさに引きつけられる。とはいえ、今年は桜前線も順調に北上し奈良市内では既に開花。花の競演も楽しめそう。

▲木津川上流の渓谷沿いを中心に約1万本の梅が美を競う月ケ瀬村


写真と文 牡丹 賢治

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