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やまと建築詩

法華寺浴室(からふろ)(奈良市)

庶民のための蒸し風呂

 天平時代、光明皇后の「我自ら千人の垢(あか)を去らん」という1000人施浴発願によって建てられた浴室で、日本の社会福祉の原点とも言える建物がこの浴室(からふろ)。皇后が患者の垢を流していると、1000人目は膿(うみ)を垂らした老人。「膿を吸ってくれ」と言う老人に皇后が嫌がりもせず吸おうとすると、病気の老人は仏になり光明を放った、という伝説も残っている。

戸棚のような浴室

▲戸棚のような浴室。すのこ状の床板から蒸気が出るいわばスチームサウナ

 当時は500メートルほど東、現在の一条高校あたりに建っていたが慶長年間に現在地に再建されたと伝えられている。建物は明和3(1766)年に建て直されたことが判明している。その後も江戸、明治期に何度か修理が重ねられたが、昭和になってから建物の傷みがひどくなり、室戸台風などの災害で竈(かま)もつぶれ使用できなくなっていた。このほどようやく修理が行われ、今年9月に修理が完成した。

 切り妻造りの妻入り、桟(さん)瓦ぶきの南向き建物(幅約6メートル、奥行き約4メートル、高さ約4メートル)。中は二つに区切られ、東側に竈部屋、西側が浴室となっている。この浴室は蒸気導入方式の蒸し風呂で蒸気浴。竈部屋には二つのカマがあり直径約70センチの大きな方は浴室に蒸気を送るためのカマ。小さいほうは薬草を煮るときなどに使うカマ。大きなカマの上は浴室となっていて戸棚のような浴室の扉を開けて入る。蒸気はすのこ状の床板から出て浴室を充満させる仕組み。浴室西側には水桶(おけ)があり、体を冷ますために使う水がためられる。

 多くの寺院で見られる湯屋は掛け湯や取り湯形式で僧侶が体を清めるのに用いたもの。この「からふろ」は庶民の施浴のために用いられたもの。大正時代以降使われていなかった浴室がおよそ80年ぶりによみがえった。修復後、関係者らにより一度火がともされた。今後の活用は未定、というが貴重な民俗文化財の復活を喜びたい。

竈部屋

▲大小2つのカマが並ぶ竈部屋。
大きなカマは半分、浴室にもぐりこんでいる


浴室上部にある装飾

▲浴室上部にある装飾。風化した木に歴史を感じさせる

DATA

●  法華寺浴室(からふろ) ●

奈良市法華寺町882

【拝観料】(本堂と東庭園など共通)
大人(高校生以上):1400円、中学生:1200円、小学生:700円

【問い合わせ】同寺、電話:0742(33)2261

情報が古くなっている場合がございますので、ご利用の際は必ず事前にお問い合わせください

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

 

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