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万葉の景色

国栖の里

壬申の故事今に

▲天皇渕と呼ばれる深いよどみをたたえる吉野川。
高見川と吉野川本流が合流するあたりは
大きなカーブを描くように流れる(吉野川)

 山深い国栖の里は和紙と割りばしの産地として知られている。高見山から流れる高見川と吉野川本流が合流し、大きなカーブを描く清冽(れつ)な流れが印象的。川辺では灰白色の柔らかな毛に覆われたネコヤナギの花が早春の日に輝く。

 『 国栖らが 春菜摘むらむ 司馬の野の しばしば君を 思ふこのころ 』
作者不詳(巻10~1919)

 「司馬の野」と「しばしば」をかけた、万葉人お得意の恋歌。山間の斜面に点在するわずかな畑で春菜を摘む人々、きっと水面がキラキラ光り、のどかな春景色だったに違いない。南国栖、天武天皇を祭る浄見原神社で毎年旧暦の正月14日、古式ゆかしい舞が奉納される。

 近鉄上市駅からバスで約30分。途中、宮滝や菜摘(夏実)など万葉ゆかりの地をたどり現地へ。「国栖奏(くずそう)を見に行く」という俳句愛好家と乗り合わせた。静かな山里もこの日ばかりは遠来から訪れる人も多い。

 天皇渕と呼ばれる深いよどみをたたえる吉野川沿いの小道を数100メートル、岸辺に屹立(きつりつ)する岸壁の上に神社がある。古びた社殿は、いにしえを思わせる。壬申の乱(672年)の際には大海人皇子をかくまいウグイやクリを持ち寄り、舞いを見せ慰めた、という。

 神官に導かれた舞いの翁(おきな)と笛、鼓、歌を担当する楽人ら12人が桐(きり)と竹と鳳凰(ほうおう)の模様を染めた狩衣、えぼし姿で舞殿に上がり、祝詞のあと、「世にいでば 腹赤(はらか)の魚の片割れも 国栖の翁が 渕にすむ月」などと一歌、二歌を唱和。三歌に続き榊と鈴を持った翁2人が音楽に合わせ優雅に舞う。

 ウグイや赤ガエルなど神へのささげ物もユニーク。太古の芸能を今に伝えて舞う地元の人々が姿が美しい。


▲毎年旧暦の正月14日に営まれる国栖奏


写真と文 牡丹 賢治

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