 雷 丘
飛鳥路に黄色の春
 ▲春が駆け足でやって来た明日香路。雷丘を背に咲き誇る菜の花が揺らぐ
(明日香村奥山)
万葉の旅といえば、だれもが一度は訪れる飛鳥。豊浦を過ぎ、間もなく漢字で一文字「雷」、なんともおっかない道路標識が目に飛び込む。
「いかずち」と読む。
飛鳥川を挟み、有名な甘橿丘(あまがしのおか)からすぐ。いささか見劣りするが、ここにも丘が…。
高さ10メートルほどのこんもりとした雑木林、うっかりすると見過ごしそうだ。
『 大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に いほらせるかも 』
柿本人麻呂(巻3-235)
万葉集に詠まれた雷丘は、この一首のみ。が、場所については甘橿丘、あるいは飛鳥川上流にある南淵山の峰の一つという説も。
地名の由来は定かではないが、その昔、稲妻が走り雷鳴がとどろき、雷が落ちたことから、そう称したとか。
春が駆け足でやって来た。菜の花が咲き乱れる先に見える景色は穏やかだ。ここからは早春の甘橿丘や香具山なども一望でき、飛鳥を眺めるには絶好のロケーション。
太陽が西に傾くころ、風になびく黄色い花は一層輝きを増した。
さて、この歌は都が藤原宮に遷(うっ)った時代、持統天皇の国見儀礼に参加した作者が女帝を神格化し、格調も高々と詠んだ。
わが国で初めて本格的な都城が築かれただけに活気に満ちていたことだろう。
▲「雷」の交差点。
Ikazuchiとローマ字の読みがなければ「カミナリさま出現か」と、どきり
写真と文 牡丹 賢治
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