このページでは、Javascriptを使用しています
奈良新聞WEB トップへ戻る
 
←次へ 前へ→
万葉の景色

石上布留

古道の風情に安らぎ

大杉

▲こけむす大杉が天に向かい、堂々と伸び人々を優しく包みこむ
(天理市の石上神宮)

 奈良盆地の東、山すそを南北に貫く最古の道として知られる「山の辺の道」のほぼ中間、石上から南は今なお、古道の風情が漂い、散策する人が多い。

 石上神宮は天理市役所や天理教本部、その関連施設が建ち並ぶ市街地にありながら、うっそうと茂った森の中に位置し心安らぐ。

 広々とした玉砂利を踏み締め参道を進むと、放し飼いのチャボが群れ遊ぶ。のんびりと時間が過ぎるような気がし、違空間に迷う込んだよう。「万葉集」に詠まれた神杉だろうか。しめ縄が張られ、どっしりとた老杉が桧皮葺(ひわだぶ)きの楼門回廊のわきにそびえる。ほかにも大木が天に向かい堂々と伸び、人々を優しく包みこむ。

『 石上 布留の神杉 神さびし 恋をも吾は 更にするかも 』
柿本人麻呂歌集(巻16-3816)

 この年になり、もう恋はこりごりだと思っていたが…。布留の地名を詠みこんだ歌は10首余りあるが、甘美な恋歌が多い。さて、神宮のご神体は布都御魂剣(ふつのみたまつるぎ)。本殿はなく、布留の瑞籬(みずがき)という石垣に囲まれた禁足地がそれにあたる。

 すぐそばを“万葉の布留川”が流れる。竜王山を源に天理市内を横切り初瀬(大和)川へ。石上神宮辺りを境に下流はコンクリートで護岸され素っ気ないが、上流は自然が残り、万葉人の歌ごころが伝わってくる。

『 吾妹子や 吾を忘らすな 石上 袖布留川の 絶えむと思へや 』
作者不祥(巻12-3013)

私のことを忘れないでくださいね。布留川の流れが絶えないように…。

『 石上 布留の高橋 高高に 妹が待つらむ 夜ぞふけにける 』
作者不詳(巻12-2997)

 布留の高橋。そこを渡りつつ妻のもとへと急ぐ男の姿を詠んだ歌だが、山が迫った渓谷の茂みに瀬の音だけがする現場も今は立派な橋が架かり、昔の橋のイメージは全くないが、東海自然道の一角。

 立春を過ぎ、菜の花が迎えてくれる。さらに上流、東の山をさかのぼると落差20数メートルの「桃尾の滝」に。この辺りまで来ると、川はあるがままに蛇行し、懐かしい姿を見せてくれる。

布留の高橋

▲布留の高橋。昔の面影はないが、春の装いに


写真と文 牡丹 賢治

ページ上部へ移動

グラフ:目次ページに戻る

奈良新聞WEBトップに戻る


 

会社概要採用情報新聞購読出版情報個人情報保護特定商取引法に基づく表示サイトマップ