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万葉の景色

阿騎野

一瞬の美「かぎろひ」

柿本人麻呂像

▲大宇陀町が所蔵する壁画「阿騎野の朝」をもとに、
「阿騎野・人麻呂公園」のシンボルとして制作された柿本人麻呂像。
躍動感あふれた騎馬は今にも動き出しそうだ。
同公園は「かぎろひの丘万葉公園」からすぐで、この辺りが狩猟場所だった、という。

 『 東の 野に炎(かぎろひ)の 立つ見えて かえり見すれば 月傾きぬ 』
柿本人麻呂(巻1-48)


 持統6(692)年冬、柿本人麻呂が軽皇子に同行し、皇室の狩り場だった阿騎野(あきの)を訪れた時、その雄大な夜明けの風景を目の当たりにし、詠んだ秀歌。その昔、宇陀川一帯を「阿騎野」と呼び、起伏に富んだ格好の遊猟地だったようだ。

 夜明前のひととき、東の野のかなた一面が薄赤とも茜(あかね)色とも表現できない美しい色に染まる一瞬が、「かぎろひ」。厳冬のよく晴れた、日の出1時間ほど前に現れる最初の陽光、といわれる自然現象である。日の出後の朝焼けとは一味違い、幻想的だ。

 地元、大宇陀町は史実に基づき、昭和47年から毎年、旧暦の11月17日に「かぎろひを観る会」を開催。役場近くの「かぎろひの丘万葉公園」は未明にもかかわらず、大勢の人でにぎわう。

 しかし、自然が相手だけに、きれいに見られる確率は低い。近年では、平成8年に見えただけで過去をさかのぼっても数度とか。この年、運良く撮影に出掛けていた。取材ノートをひもとけば、前日の夜、同僚と会社を出発し天益寺(同町迫間)近くでカメラを三脚に据え夜を明かした、とある。

 翌日の紙面では、午前6時すぎ、東の空に淡い赤い帯が見えはじめ(中略)、日の出までの間、雲ひとつない晴れた空に赤、オレンジ、黄と色彩の変化を遂げていく鮮やか「かぎろひ」…とあり、万葉歌そのままの情景に観衆が魅了された様子を伝えた。


 『 日並の 皇子の命の 馬並めて 御猟立たしし 時は来向ふ 』
柿本人麻呂(巻1-49)


 もっとも、軽皇子にとってこの土地はただの狩り場ではない。かつて、亡き父・草壁皇子に連れられ、たびたび訪れた思い出の場所。馬を並べ、さっそうと狩りをした姿をしのんだ。

夜明け前

▲夜明け前の晴れた空に鮮やかな色彩の変化を遂げる
「かぎろひ」=平成8年撮影=。町は毎年、旧暦の11月17日に
「かぎろひを観る会」を開いている
(平成14年は12月20日に開催を予定している)


写真と文 牡丹 賢治

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