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万葉の景色

葛城の道

神話の時代思いはせ

イチョウの老木

▲黄葉が盛りを迎え、ひときわ目を引くイチョウの老木が辺りを覆う
(御所市森脇の一言主神社)

 葛城古道(6月3日付掲載)の続編。古い民家が軒を連ねる長柄を過ぎ、細い道を進むと山麓(ろく)線(御所香芝線)と交差、一言主(ひとことぬし)神社の鳥居に出る。長い松並木の参道を進むと葛城山を背に社殿が建つ。この時期、推定樹齢1200年といわれるイチョウの老木が見事に黄葉し、目を引く。

 大きな幹には乳房を思わせる膨らみがあり、樹皮の突起は乳首のように見え「乳イチョウ」、「宿り木」とも。子どもを授かり、お乳がよく出ますようにと願う人が訪れる。また、何ごとも一事で決めてくれることから、一言だけ願いを聞いてくれるという言い伝えがあり、信仰が厚い。


  『葛木(城)の 其(襲)津彦真弓 荒木にも 憑めや君が わが名告りけむ』
作者不詳(巻11-2639)


 境内に万葉歌碑がある。葛城襲津彦は仁徳天皇の皇后、磐姫(いわのひめ)の父で、4世紀末前後に活躍し葛城氏の祖と仰がれていた。「荒木」は新しい木で作った強い弓で、頼もしいもののたとえ。本拠地は今の森脇辺りで、強大な勢力を誇っていた。


  『君が行き 日長くなりぬ 山尋ね 迎えか行かむ 待ちにか待たむ』
磐姫皇后(巻2-85)


 行幸に出た天皇の帰りを待つ内容で、夫を思う優しさがうかがえる。だが、古事記では一転、嫉妬(しっと)深い女性として描かれている。森脇の外れ、杉木立の中に「綏靖天皇葛城高丘宮趾」と彫られた石碑がたたずむ(綏靖天皇は第2代天皇)。

 伝承地を過ぎれば、千体石仏で知られる九品寺。途中、大和三山を望むビューポイントが開ける。

 遠い神話の時代とはいえ、さまざまな人間ドラマが豊かに想像できる地。飾り気のない里の風景までもが神秘的に思える。

一言主神社

▲「一言神(いちごんじ)さん」と呼ばれ、親しまれている一言主神社。
黄金の葉を敷き詰めた境内は神々しい


高丘宮跡伝承地

▲杉木立の中、石碑がひっそりと立つ高丘宮跡伝承地


写真と文 牡丹 賢治

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