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万葉の景色

倉橋川

古き石橋に思いはせ

倉橋川

▲川面を錦に染める木々が覆う。
談山神社への"道"、倉橋川 (桜井市百市)

 桜井市の多武峰、鹿路(ろくろ)あたりが源といわれる倉橋川。

 今は寺川と呼ばれ、同市街から田原本町内などを北上し、大和川に至る。源流から八井内(やいない)、百市(もものいち)、下居(おりい)、倉橋…と集落を越えるごとに次第に川幅を広げる。

 この間、紅葉が盛りの談山神社への道(県道桜井吉野線)沿いを流れ、ところどころで川面を赤く染める木々が張り出す。

 倉橋の崇峻天皇陵辺りまでは水辺まで山が迫る谷。昼間でも薄暗く、岩がゴロゴロと荒々しい。今では渡る人もないようだが、あちこちに石橋があり流れの一部が遮断され瀬音が高まる。川に点在する石を見ながら、遠い昔に思いをはせた歌がある。


 『 橋立の 倉橋川の 石の橋はも 男ざかりに わが渡りてし 石の橋はも 』
柿本人麻呂歌集(巻7-1283)


 源流、鹿路は明日香から吉野へ越える峠の一つ。今も地元の人を中心に抜け道として使われているようだ。万葉集には、長皇子(天武天皇の第四皇子)の狩りに同行した柿本人麻呂が詠んだ長歌もある。倉橋山を題材に詠んだ歌も。こちらは今の音羽山。やや離れた明日香路や藤原宮跡からの眺めは、稜(りょう)線がくっきりと美しい。

 倉橋川と別れ、燃えたぎる黄葉、紅葉に誘われ、藤原鎌足が祭られた談山神社へ。四季を通じて美しいが、深い木立の中、カエデやヤマザクラ、イチョウが朱塗りの社殿とともに錦(にしき)を織り成す秋が一番いい。途切れることない観光客が、十三重塔を目指した。

 雪のたよりが届くころ、再び訪れよう。そう決め、帰路についた。

石橋

▲今も残る石橋。流れは荒々しく、瀬音が高まる


談山神社

▲深い木立の中、真っ赤に染まる談山神社


写真と文 牡丹 賢治

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