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万葉の景色

高円山

秋色のわびしさ歌に

ドライブウエー

▲日が西に傾く黄昏時、きらきら輝く街並みとは対照的に高円の山腹は色を失う。
が、縫うように走るドライブウエーには、車の光跡が赤々と…
(奈良市白毫寺町)

 春日山の南に連なる高円山。

 高さ426メートル、夏の夜を彩る「奈良大文字送り火」(8月15日実施)の舞台としてもおなじみだ。昭和35年、県内の戦没者約3万人の慰霊と供養を目的に、恒久平和を祈る行事として始まった。山腹に巨大な「大」の字が現れ、夜空を焦がす。

 万葉の時代、高円山一帯は春日野の一角をなし、おそらく今の白毫寺付近から鹿野園町にかけての台地は高円の野と呼ばれ、遊宴や狩猟の地として親しまれていた。辺りは四季の風物にも富み、歌ごころを楽しませ「高円山」「高円の山」「高円の野」など高円の地名が27も出てくる。

 春日野の春に比べ、"秋色"のわびしさが多く詠まれているのも特徴だ。今も新薬師寺や志貴皇子ゆかりの白毫寺はハギの寺として名高い。花のピークは過ぎたが、付近を散策する人々でにぎわう。とりわけ白毫寺に至る参道の石段を埋め尽くすハギは圧巻。思いは古代へ。

 『 高円の 野辺の秋萩 いたづらに 咲きか散るらむ 見る人なしに 』
笠金村歌集(巻2-231)

 見る人もないままに、空(むな)しく咲く。そして散っていく…、といった内容だろうか。志貴皇子の死を悲しみ、悼んだ歌だが、当地で見るハギは皇子をしのぶかのように咲き乱れる盛りもよいが、涙雨のように散る花に心引かれる。

 奈良の街並みが一望できる白毫寺も、近くまで住宅が迫り、かつての風情はない。半面、ドライブウエーが整い簡単に高円山の頂上近くに足を延ばすこともできる。二上山や遠く葛城・金剛の山々、また大和三山もかすかに見える。展望台には歌碑も。

 『 高円の 秋野のうへの 朝霧に 妻呼ぶ牡鹿 出で立つらむか 』
大伴家持(巻20-4319)

 夕やみせまるころ、日はかなた生駒の稜(りょう)線に。秋の日はつるべ落とし、と言われるように瞬く間に黄昏(たそがれ)、夜の帳(とばり)が下りた。

参道を覆うハギ

▲白毫寺に至る参道を覆うハギ。植物を題材にした歌では、
ウメの119首を押さえ、142首を数える

写真と文 牡丹 賢治

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