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万葉の景色

明日香の秋

広がる黄金の棚田、彼岸花が彩り

飛鳥古京

▲秋色に染まる飛鳥古京。
西の稜線に日が入る寸前、里の景色は黄金に輝く
(明日香村細川)

 万葉集に歌われた細川は、今の明日香村を流れる冬野川を指すようだ。多武峰に源を発する小さな流れが細川の集落あたりで川らしくなり、やがて石舞台古墳の南で飛鳥川に合流する。観光客らでにぎわう石舞台から東へゆるやかなカーブを進むと、道は二手に分かれる。

 右に曲がると飛鳥川沿いに稲淵、さらに栢森。棚田百選に名を連ねる「飛鳥神奈備の里」に至る。直進すれば上居から細川の集落。観光コースから外れ、山の中腹に民家が点在する里山の景色が続く。丘の斜面をひな壇のように広がる棚田が黄金に染まり、収穫の季節到来を告げる。

 『 ふさ手折り 多武の山霧 しげみかも 細川の瀬に 波の騒ける 』
柿本人麻呂歌集(巻9-1704)

 この辺りまでくると、観光地としての華やかさはないが何故か心が落ち着く。真っ赤な彼岸花が畦(あぜ)を埋め尽くし、頭(こうべ)を垂れる稲穂とのコントラストが絶妙。計算され尽くしたような美しさがある。

 さて、万葉集で彼岸花を題材にした歌は意外に少なく1首あるのみ。人麻呂の歌にある壱師(いちし)の花を彼岸花とするのが定説のようだ。別名の多さでは群を抜き、よく知られている曼珠沙華(まんじゅしゃげ)をはじめ幽霊花、死人花…。が、イメージがよくない名前が大半。詠まれなかった所以(ゆえん)だろうか。ちなみに、萩(はぎ)がトップで142首。数の多さだけで人気度は測れないが、ともに秋に咲く花だけに皮肉な結果だ。

 稲を詠み込んだ歌は田や穂を含め57首。日本人にとって主食だけに納得の数といったところ。刈り取られた稲を束ね、天日に干す「はさかけ」があちこちに。今ではめっぽう少なくなった秋の風物詩が堪能できる。

 『 路の辺の 壱師の花の いちしろく 人皆知りぬ わが恋妻を 』
柿本人麻呂歌集(巻11-2480)

 『 秋の田の 穂の上に霧らふ 朝霞 何処辺の方に わが恋ひ止まむ 』
磐姫皇后(巻2-88)

 今月15日、同村飛鳥に「万葉集」を中心にした古代文化に関する拠点、県立万葉文化館がオープンした。

彼岸花

▲真っ赤に色づいた彼岸花。棚田を彩る


写真と文 牡丹 賢治

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