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万葉の景色

吉野・宮滝

荒々しさは今も新鮮

宮滝周辺

▲奇岩巨石が累々と重なり合い、ダイナミックな景色が楽しめる宮滝周辺 。
夏盛り。が、台風が接近し人影はない
手前が柴橋、後方は宮滝大橋(吉野町)

 万葉の吉野は、花の吉野山ではなく吉野川、ことに宮滝周辺を指す。かつて「吉野離宮」があり、歴代天皇がしばしば行幸している。奇岩・巨石が累(るい)々と重なり合い、川の流れは淀(よど)みなく激しい。大和国原とは全く違う荒々しい景色は、当時の人々にとって新鮮に映ったことだろう。

 菜摘の里辺りまで穏やかに流れていた吉野川が宮滝大橋(国道169号)をくぐると、一変する。豪快な飛沫を散らし、時に滝のように流れる。夏、柴橋辺りは今も格好の遊泳場。岩のてっぺんから飛び込むつわものも。万葉の時代とて同じで、大宮人らが競って船遊びを楽しんだ。

 『 山高み 白木綿花に 落ちたぎつ 滝の河内は 見れど飽かぬかも 』
笠金村(巻6-909)

 静から動、緩から急、淵(ふち)から瀬へと変わる川の流れ。いつまで見ていても飽きない、いい眺め。心躍らせて吉野に足を運んだ気持ちがよく分かる。象(さき)の小川の清流が吉野川に注ぐ「夢のわだ」もここ。点在する万葉の故地に胸躍る。

 『 わが行きは 久にはあらじ 夢のわだ 瀬にはならずて 淵にあらぬかも 』
大伴旅人(巻3-335)

 九州・太宰府に赴任した旅人の望郷の思いがうかがえる。 柴橋のたもとから河原に下り、夢のわだに向きあい、本流に流れ落ちる滝の音をしばし楽しんでいた。すると今風のゴムボートに身をゆだね、残りわずかとなった夏休みを満喫しようと若者の歓声が…。

 『 滝の上の 三船の山に 居る雲の 常にあらむと わが思はなくに 』
弓削皇子(巻3-242)

 川面に迫り、そびえる三船山に思いを込め詠んだ。吉野を題材にした歌は100首近くあり、枚挙にいとまがない。

遊泳場

▲こちらが本来の姿?川の流れは変化に富み、
格好の遊泳場。この夏も大勢が訪れた


柴橋から見た三船山

▲柴橋から見た三船山は、川面に迫る勢い

写真と文 牡丹 賢治

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