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万葉の景色

泊瀬川

初瀬川

▲雑草が生い茂り、緑あふれる土堤もすっかり少なくなった初瀬川。
いつの日か清い流れが戻って来れば…。
万葉びとが愛した泊瀬川(桜井市初瀬)

 万葉の泊瀬(はつせ)川といえば、現在、桜井市を流れる初瀬川と下流の大和川を指す。

 今の初瀬川はところによりゴミが堆(たい)積し、お世辞にも清らかな川とは言い難い。

 大和川に至れば水質汚濁ワースト1、2を争うありさま。しかし、往年の瀬は流れも早く、水清くして川音澄む川であったようだ。

 万葉びとが歌う。


 『 泊瀬川 流るる水脈の 瀬を早み 井堤こす浪の 音の清けり 』
作者不詳(巻7-1108)


 さて、初瀬の名は万葉に38回登場するが、半数以上の19首は「隠口(こもりく)の」の枕詞(まくらことば)がつく。

 山と山に囲まれた初瀬の上流には長谷寺がある。ゴールデンウイーク期間中、ボタンが見ごろとなり、長い登廊のわきを中心に150種類7000株が豪華絢爛(けんらん)に迎えてくれる。

 花を楽しみつつ、舞台に立てば初瀬の谷間に参道を見下ろす「隠口の泊瀬」が実感できる。


『 事しあらば 小泊瀬山の 石城にも 隠らば共に な思ひわが背 』
作者不詳(巻16-3806)


 泊瀬の山で死んでもいいから、と男に迫る女性。

 飛鳥や藤原京にも近く、市のある海石榴市(つばいち)にも近い同地は、古くから人が住みつき集落が散在し、男女の話題も事欠かないようだ。

 万葉びとに静かに愛された泊瀬隠口は、長谷寺の観音信仰が盛んになった平安時代には憧(あこが)れの的に。

 そして今、四季を彩る花や緑を愛(め)でようと参拝客が引っ切りなしに押し寄せる。

ボタン

▲長い登廊のわきを豪華に彩るボタン(長谷寺)


長谷寺

▲新緑の季節を迎え、心和む長谷寺。
隠口の初瀬、そんな形容がいかにもふさわしい、自然豊かな山懐にある


写真と文 牡丹 賢治

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