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市民の声を聞け!
論説委員 藤山 純一
   奈良のもう一つの表玄関であるJR奈良駅。その駅前再開発事業がいよいよ正念場を迎えている。歴史ある駅舎の移築も終え、奈良駅周辺の幹線道路との連続立体交差事業が現実のものとして姿を現しつつある。同駅東西の広場も広い平地となり、今秋からは高架化事業が目に見えて進展していきそうだが、平成22年の完成まで駅周辺はかなり交通渋滞が予想されそうで、県、奈良市には十分な渋滞緩和策をお願いしたい。

 ところでこのJR奈良駅周辺の再開発事業は、県都・奈良市が世界に誇る国際文化都市として21世紀に飛躍するための目玉事業の一つであった。名づけて新都市拠点整備事業「シルクロード・タウン21」である。昭和63年の市制90周年を記念し、10年後の百周年を目指して打ち出した大プロジェクト。この年は奇しくも「なら・シルクロード博」も盛大に開催され、「新しい奈良創生を目指そう」(当時の西田栄三市長)というものだった。

 この「シルクロード・タウン21」は、市が800億円、民間が400億円の総額1200億円を投じる大事業。駅の東西広場周辺に、百貨店、ホテルなどが入る二つの商業ビルに文化ホール、テナントを含め、近鉄奈良駅周辺に負けない活気あふれるターミナルになる予定だった。当時の完成イメージ図を見ても、瓦屋根風の新駅舎と両側に広がるビル郡とが調和し、駅前広場の旧駅舎の周りには人々が集う、まさに古都・奈良の表玄関にふさわしい新都市が出現したようだ。

 しかし、その後バブル経済の崩壊とともにこの計画は行き詰まり、実現できたのはホテルが入る商業ビルと市民が文化活動などに利用する「なら100年会館」ぐらい。広大な駅前広場は、着々と進む架線の高架化事業とは裏腹に、静かにその姿を留めているのが現状だ。

 県内屈指の交通の要所でもある近鉄西大寺駅周辺の市街地整備事業も、この昭和63年に計画決定され、「奈良市の新しい顔」(当時の西田市長)としてその整備が本格的に進められようとしたが、こちらも頓挫し計画は白紙に。平成22年には全国から、いや世界から多くの人々にこの奈良を訪れてもらい、盛大に開催しようと計画している「平城遷都1300年祭」がある。その準備も着々と進めれれており、来月には「平城遷都1300年記念事業協会」(仮称)も設立され、県も機運醸成に本格的に乗り出した。

 このような状況の中で、肝心の奈良市自体が混迷の度を深めている。一刻も早く解決しなければならない重要な行政課題が山積しているにも関わらず、行政のトップである鍵田忠兵衛市長が市議会の辞職勧告決議を無視して居座り続けているからだ。いうまでもなく市議会議員は市民の代表。その多くがが辞職を求めたということは、市民の多くが辞職を望んでることと同じである。

 なぜこんな事態を招いたのか。それは鍵田氏が税金未納や経歴詐称、社会保険の不正取得疑惑、そして公選法違反とみられる寄付行為、それに選挙公約として掲げ、自らもその間違えを認めた「奈良再生プログラム」のいい加減さ。どれもこれも、もし選挙前にこれらが発覚していたら鍵田氏は果たして当選していただろうか。全面修正された「奈良再生プログラム」については、これを公約と信じ1票を投じた市民にどんな言い訳をするのだろうか。

 ところがこのことについて鍵田氏は自らのホームページで「多くの市民の皆様のご賛同を得ました奈良再生プログラムの実現に向けた予算案が、市議会において修正議決され、多くのプランが減額凍結されましたことは、市民の皆様が望まれている施策の実現を拒むもの」と記している。なんとこのプログラムが修正されたのは議会のせいと言わんばかりではないか。本末転倒も甚だしい。自らの間違い、責任を棚上げし、それを他人に押し付ける、公人として許せない行為である。

 さらに辞職勧告後の記者会見でも鍵田氏が述べていたが、辞職すれば「新市」がスタートしたばかりで市民の不安を招くとも記しているが、これも全く逆といわざるを得ない。鍵田氏が市長に留まることが市民に大いに不安を与えているもので、これ以上市長に固執し居座れば居座るほど混迷が深まるのだ。むしろあの選挙で投じた一票を返してほしいと真剣に思っている市民も多いのではないだろうか。3年後には市制施行110年を迎える奈良市に、これ以上の汚点を残すべきではない。

(2005.4.15 奈良新聞)


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