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金曜時評

自助が基本である - 編集委員 松岡 智

 熊本地震は、きょう14日で最初の震度7の揺れから1年になる。震災が起こるたびに、私たちは対処すべき何かを学んできた。大地震発生の日が再び巡り来ることは、その間の対応が問われるときでもある。

 熊本地震では、被災した市町村の状態や避難者の動向、支援物資の把握が確実にできず、応援の物資、人員が必要なところへ届かなかったことが課題とされた。国は情報通信技術(ICT)の活用とともに、地方公共団体の応援受け入れ体制の整備も必要とし、全国の自治体に災害時受援体制のガイドラインの策定を求めている。

 県も現在、ガイドラインは未策定。ただ本年度、熊本地震を踏まえて地域防災計画を見直していて、その中でガイドライン策定を進め、県内市町村にも示す考えだ。

 災害被害を減らすためには公助とともに、初期段階での共助、自助が重要だとされる。公助では行政が体制をさらに整えようとし、共助として自主防災組織が各地で設立される中、自助はどうか。

 住友生命保険は昨年12月、自宅での防災に関するアンケートを全国1千人を対象に行った。結果によると、家庭の防災対策の自己採点は100点満点で平均34・2点。一方で過去1年間に新たに実施した防災対策は約8割が特になく、費用も平均2501円で前年から706円の大幅減だった。

 また県は、防災意識向上などを目的に、同日同時刻に各自で身を守る行動を実行する県一斉地震行動(シェイクアウト)訓練を、平成26年から実施。一昨年は初年度比で参加団体はほぼ倍増し、参加者も約5万5千人増えた。だが昨年の第3回は、前回から約150団体2万人の減少となった。

 こうした状況を見る限り、それぞれに事情はあるにしても、災害に学び、自分の身はまず自分で守るとの意識は低調だ。公助、共助への期待が大きいのかもしれないが、役場自体が被災した例や、地域全体が自身とほぼ同様の被害を受けることを思えば、人任せだけでは心もとない。

 県の冊子「わが家の防災対策」を参考にできることを実践し、シェイクアウトや身近な防災訓練に参加するのはどうか。どれか一つでも災害対応への意識が増し、災害発生時の冷静な行動につながるはずだ。

 当たり前ながら災害はだれにも、いつでも起こり得る。まずは自らの適切な対応が自身の周辺から危険を一歩遠ざけることをあらためて認識し、間近に迫っているかもしれない危機に備えたい。

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