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金曜時評


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自社の魅力を探れ - 編集委員 松岡 智

2016年12月9日 奈良新聞

 今年10月の県内有効求人倍率は1・18倍で、全国的な流れと同様に26年3カ月ぶりの高い水準を示した。企業の採用意欲の高さがうかがえる半面、業界によっては人手不足が深刻な状況。「売り手市場」はさらに拡大傾向で、新卒大学生をはじめ求職者に大手志向の強い中、中小企業は人材の確保に苦心する状態が続いている。

 そんな現況も踏まえて本欄では今年、労働や経済に関連するさまざまな事象を取り上げつつ、中小零細が多数を占める県内企業の人材確保、事業継続に向けた対応のあり方に触れてきた。その根底には、現有の従業員の帰属意識を高め、優れた人材の確保のためには、内外にアピールできる自社の優位性、特長が必要との思いがあった。

 今年に入り、技術力や商品、企画営業力、社会貢献度といった従来型の企業の魅力に加え、働きやすさの部分が求職者に選ばれるポイントとして重要度を増しつつある。政府を中心に、生産性の向上を念頭に置いた長時間労働の是正や、ワーク・ライフ・バランスの実現、非正規労働者の処遇改善などを柱とする働き方改革が強く提唱されているからだ。

 県でも、県内人口の減少傾向や少子高齢化に伴う将来的な労働力不足を懸念。若者が家庭との両立を図りながら働ける環境づくりを主眼に、知事が掲げる「働いて良し」の実現に向け、約2年前から県内事業所の働き方改革への取り組みを進めている。

 まずは改革に対する県独自の課題の有無が探られ、行政と労使が意見交換する協議会の設立、情報収集を実践。本年度末には成果をまとめ、来年度以降に事業主を主対象とした啓発事業を展開したい意向だ。

 もっとも関係者によれば、一部を除けば変革に対する県内事業者の意識はさほど高くはない。続く幹部、管理職の意識改革も考えれば、早期に改革を軌道にのせるにはハードルは高いと言わざるを得ない。

 ただ、政府主導の働き方改革は今後、労働者のスキル(技能)が賃金に反映する労働、雇用形態への移行を企業にうながすことも予想される。スキル向上が生活にかかわる労働者側が、それを実現しやすい職場を選択することは十分考えられる。

 県内の各事業者が何でアピールし、人材確保などを進めていくかはさまざまあることだろう。変化には不安もつきまとう。だが、打ち出せる魅力に乏しい企業が立ち止まったままでは、未来にあい路が待つ可能性が高まることは間違いがなさそうだ。

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