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国原譜

奈良市の興福寺を訪れると、北円堂の南に…

 奈良市の興福寺を訪れると、北円堂の南に柵で囲まれた一角がある。奈良時代に三つあった金堂のうち、西金堂がそこに建てられていた。

 堂内に安置されていたのは釈迦を中心に集まった十大弟子や菩薩たち。阿修羅をはじめとする八部衆も含まれていた。液体の付着被害があった華原磬(かげんけい)もその一つで、西金堂には欠かせないものだった。

 昔、妙道という菩薩の夢に光り輝く金鼓(こんく)が現れ、そこから仏が生まれていた。たたくと、えもいわれぬ音がして、悟りに導くようだったという。

 この金鼓こそが華原磬で、西金堂の世界はお経に書かれた妙道菩薩の話をもとに構成されていた。2匹の龍に抱かれた金鼓は触れるのさえ恐ろしいが、それを汚した者がいる。

 華原磬は創建当時から伝わる興福寺の重宝であるばかりでなく、国宝に指定されている。液体が何であれ、痕跡が残れば取り返しがつかない。

 華原磬の響きは懺悔(さんげ)の教えのようでもあったという。信仰なのか、いたずらか、人目を忍んで液体をかけた者の耳に、その響きは聞こえたろうか。(増)

 

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