世界の注目を集めた米大統領選挙は一般投票の結果、共和党のトランプ氏が接戦となった複数の州で勝利、民主党のクリントン氏を突き放した。

　世論調査などを踏まえた大方の事前予想とは異なる展開。各州の開票速報が出始めると日本国内でも株価が急落、円高が進むなど動揺が広がった。

　選挙結果が経済の混乱につながると懸念したのだろう。似た現象は欧州連合離脱の是非を問い、今年6月に実施されたイギリスの国民投票でも見られた。あの時も事前情報に予断が交じった。

　また今回は表立ってトランプ氏の主張に賛同はしないが投票はする、隠れ支持者が多かったとされ、当落の読みを難しくした面も指摘されそうだ。

　それは政治的に公正な言動「ポリティカル・コレクトネス」に飽き足らない不満層だという。フィリピン大統領の人気を支え、欧州で難民排斥を叫ぶ新しい力が大国アメリカも動かし始めた。

　トランプショックが投げ掛けた課題の一つは、そこにあるように見える。影響力を強める「庶民の声」を聞き誤らず、かといって盲従もしない。そんな慎重さが求められる。(松)