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金曜時評

ストレスを逆手に - 編集委員 松岡 智

 労働現場でも影響のあるマイナンバー制度が大きく騒がれる中、昨年12月、比較的静かにストレスチェック制度はスタートした。労働安全衛生法の改正で、従業員50人以上の事業所は毎年1回、ストレスに関する検査を全労働者に対して実施することが義務付けられた。

 制度導入の背景には、強い不安や悩み、ストレスがある労働者が全体の約5~6割で推移し、精神障害等の労災認定件数も年々ほぼ右肩上がり(いずれも厚生労働省資料)で増えている状況などがある。新制度は、労働者が心理的負担の程度を把握し、自己管理の推進、職場環境改善につなげることで、「うつ」などのメンタル面の不調を未然に防止することが主な目的だ。

 検査で判明した高ストレス者には、本人の申し出があれば医師が面接指導を実施。必要に応じて就業上の措置も講じる。また努力義務ながら、使用者側は一定規模の集団ごとに集計、分析した結果の提供を検査実施者から受け、職場環境の改善に役立てることになる。

 奈良労働局によれば、県内での精神障害等の労災認定はひと桁ながら毎年存在しているという。ストレスへの対処は県経済界にとってもひとごとではない。

 ただ、制度が正しく運用されるなら、労働者のみならず、使用者にも相応の利点が期待できる。労働者の長期離職や自殺といった最悪の結果の防止はもとより、従業員の隠れたストレスの発見、適切な対応で、生産効率向上につなげられる。さらに、制度活用で働きやすい職場環境が作れれば、子育てや再就職しやすい事業所などと同様、熟練者の継続雇用を含め、不足が懸念される人材確保の面で優位に立てる。

 同局関係者は、今年を制度周知の年と位置付ける。確かに、プライバシーの保持徹底をはじめ、検査や面接相談の結果が労働者の不利益となる恐れ、検査の実施、評価を行う産業医の数と質といった課題も指摘される。だが、他地域に先駆けて制度を定着、深化できれば、人材確保策での「奈良モデル」を打ち出せる可能性も見える。

 もっとも、そのためには単なる実施実績にとどまらず検査の質、結果活用の実態が問われる。厚労省が示す簡易調査票での検査を基本としつつ業種業態別に質問を工夫し、的確に分析する仕組みが求められる。

 制度を生かすか否か。取り組みの充実には検査への各方面からの多様な支援と同時に、労使双方の意識改革も望まれる。

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