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金曜時評

公人としての自覚 - 主筆 甘利 治夫

 首長であれ議員であれ、公人たるものは、いかなる時も公人としての自覚が求められる。

 橿原市内で単独事故を起こし、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで田原本町長の寺田典弘容疑者(55)逮捕された今回の事件は、改めて公人の社会的責任の重さを示すとともに、公職にあるものに対する警鐘でもある。

 新学期の始まる春、夏休みが明けた秋、そして何かとあわただしい歳末に繰り広げられる交通安全運動は、所轄の警察署と自治体が一体となって安全運転を呼びかけてきた。その先頭に首長が立っていたのはどこも同じだ。

 なかでも飲酒運転による事故は、被害者も加害者も悲惨な結果になることは、近親者や知人などの例を待たずとも誰もが知っている。罰則規定が改正され、大幅に重くなった経緯がある。このため一時は夜の繁華街などの客足が激減するという現象が起き、廃業に追い込まれた酒場もあったりで、大きな影響も出た。それほど飲酒運転が常態化していたのだろう。

 時間の経過のなかで、経済もゆるやかな回復傾向にあり、「飲んべえ」に対応したタクシーの代行業も増加するなどして、夜の街も少し明るさを取り戻している。

 警察の取り締まりの厳しさもあって、飲酒運転は減ったかに見えた。客自身の自覚と酒を出す店にも「飲んだら乗るな」「車の人には飲ませない」という意識が浸透してきたといえる。

 それでも根絶できないから、繰り返し「飲酒運転をなくそう」と呼びかけてきた。

 寺田容疑者は、昼間、自宅で「缶入り酎ハイ(350ミリリットル)1本と焼酎のお湯割りをコップ1杯飲んだ」という。昼寝したあと、中学時代の同窓会に出席するため、車に乗った。誰でも分かることだが、同窓会で酒が出ないことなどない。飲めない人ならともかく、昼間から飲酒するほど酒好きな寺田容疑者が、酒席と知っていて車で会場に向かった。「帰りは代行で」とは、あとで何とでも言えることだ。もし、事故を起こさなかったら発覚しなかった。飲酒しても常習的に車に乗っていたのではないかと、思わざるをえない。

 結局、町議会議長に辞職届が提出され、受理された。田原本町は町長選を巡り、年末年始どころではないだろう。

 一年の締めくくりに、公職者への大きな教訓でもある。

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