特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

県と市町村一体で - 編集委員 松井 重宏

 年内の策定を目指す県の地方創生総合戦略の骨子が明らかになった。同戦略は人口減少の時代に対応、将来にわたって活力ある社会を実現するための5カ年計画の地方版で、県は基本目標に「住んで良し」「働いて良し」「訪れて良し」の3本柱を掲げ、「健やかにくらせる地域づくり」で健康寿命日本一を目指す、「奈良でのしごとの場の創生」で起業家を発掘、支援する―など具体的な方向58項目を盛り込んだ。

 総合戦略というだけあって、カバーする施策の範囲は幅が広く、一見すると網羅的、羅列的な印象も受けるが、県は地域特性を踏まえて政策分野を体系的に整理した結果だと説明。今後は施策ごとに具体的な事業を設定し、重要業績評価指標(KPI)の数値目標も示した上で成案をまとめる。

 地域創生と言えば県の場合、北部の脱ベッドタウン化、地域自立の推進と、山間部の振興、南北格差の是正が特徴として挙がる。3期目を迎えた荒井県政が取り組む重要課題であり、今回の骨子も軸線にブレはない。

 ただ今回の地方版総合戦略は、国が従来の「縦割り」や「全国一律」手法による弊害を排除し、各地域の実態に合った施策を進めるため、全ての都道府県と市町村に策定を求めたもので、各自治体は行政能力と施策の立案力が試されている面もある。また来月末までに同総合戦略を作成した自治体には、交付金を上乗せ支給されることも決まっている。地方自治体の「やる気と能力」が問われているとも言えるだろう。

 そもそも地方創生について、国は「地方の自立につながるよう地方自らが考え、責任を持って総合戦略を推進し、国は伴走的に支援する」との姿勢を打ち出しており、地域間の均衡より競争を是認する方向も見えている。

 だから県の総合戦略は従来の中期計画の焼き直しにとどまることはできない。県には、今後予想される地域間の競合にも遅れをとることなく、同時に県内市町村をフォロー、支援できる戦略の策定が強く求められる。

 公表された県総合戦略の骨子には基本姿勢として「県と市町村が協働して共通課題の解決を図る奈良モデルの一層の推進」も盛り込まれた。県内では奈良市など8市町村が、県より早く10月に地方創生総合戦略を策定する予定で、本年度中には全39市町村が策定を終える。

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