注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

理解できる説明を - 編集委員 辻 恵介

 集団的自衛権行使の解禁を柱とする安全保障関連法案は16日に衆院本会議で可決。現在は参院で連日、激しい論戦が展開中だ。一連の流れを振り返ってみる。

 衆院での採決前、締めくくり質疑で安倍首相は「国民に十分な理解を得られていない」と認めながらも、慎重審議を求める声を押し流し、先を急いだ。任務が拡大する自衛隊員のリスクについて「いろんな事態に対応できる訓練が可能になるので、実際にはリスクは下がっていく」と言った首相の説明は分かりにくい。

 野中広務・元官房長官ら自民党の重鎮、先輩議員だった人たちも、いろいろな機会をとらまえて、「平和憲法の大切さ」を訴え、安倍内閣にブレーキをかけようとしたが、今のところ止められていない。

 先の戦争の惨禍を体験し、その反省に立って、憲法を暮らしのよりどころとして戦後の激動期を生きてきた祖父母や親たちの世代は、苦労に苦労を重ね、今日の日本の繁栄を築いてきた。そうした平和を願う努力の積み重ね(この国のかたち)が、一内閣によって否定され、壊されようとしているように感じてしまうのは思い過ごしだろうか。

 首相は、今回の法案の成立は「国民の命を守るため」なのだと大義をかざす。だが、“戦争をしない国”が今後、他国軍と協調することで、海外に住む日本人が狙われることはないのか。NPOなど海外での地域貢献活動が、今まで通りに行えるのか。テロの危険性が高まるのではないか―など、気になることが多い。

 法案の行方や政府のやり方に危機感を持つ学生、若者、主婦らのデモや集会への参加者が増えている。県内でも、6月30日に地方議会の女性議員有志34人が、また7月14日にも奈良市議会の有志18議員が法案撤回のアピールを行った。全国の大学、法曹、医療関係者など、いろんな階層からの反対の声が広がっている。

 昨年7月の閣議決定から1年間に、全国の地方議会が国会に提出した安保政策関連の意見書は469件、うち463件が閣議決定の撤回や廃案ないし慎重な審議を求める内容だったという(7月12日付2面既報)。地方創生をうたいながら、地方の声を聞いていないのではないか。

 昨日の参院安保特別委では、前川清成氏(民主党、県選挙区)が、憲法9条の条文パネルなどを掲げながら、憲法の文言に即した議論を求めていた。政府だけでなく、与党議員には国民が理解できる「分かりやすい」説明を求めたい。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド