注目記事山下県政 世論調査の全結果掲載

金曜時評

自分なりに考える - 論説委員 北岡 和之

 できるだけ体験的に、自分のこととして考えたい。政府や政党などの論議を参考にはしても、自分はどう思うかを粘り強く考え続けたい。いま国会で論議されている安全保障関連法案のことだ。

 あの太平洋戦争は別として、記憶に残るアジア地域で起きた大きな戦争といえば、半世紀昔のベトナム戦争がまず思い浮かぶ。この戦争で、米国が関与する根拠に挙げた一つは、国連憲章第51条に基づく「集団的自衛権」と東南アジア集団防衛条約に基づく防衛義務だった。

 わが国では、憲法9条のいう「戦争の放棄」で、わが国の領域外への“兵力の派遣”は禁止されていると解釈。このため自国の領域以外の地域を含め、通常の共同防衛を約束するのは憲法違反になり、不可能だとみなされてきた。国連憲章でも集団的自衛の「権利」は認められているが、行使するのは無理としてきた。

 今回の安保関連法案はこの解釈の変更を迫るものだ。国会では、あらためて法案が違憲かどうかを論議している。

 政府が違憲ではないとする根拠の一つに挙げているのが、昭和34年の「砂川事件」における最高裁判決。そこに書かれた「自国の平和と安全を維持してその存立を全うするために必要な自衛のための措置」を集団的自衛権と結び付けようというものだ。この解釈は正当だろうか。

 中東・湾岸戦争でこの問題に関する論議が高まり、憲法9条をめぐっては、平成5年に出た『日本改造計画』という著書での小沢一郎氏の発言が注目された。小沢氏は、憲法9条に「国連の指揮下で活動するための国際連合待機軍を保有する」を付加すべし、とした。この条文を追加することで「なし崩しの解釈改憲」の心配も一掃できるとした。

 最近では、自民党が平成24年4月にまとめた「日本国憲法改正草案」が思い浮かぶ。ここには憲法9条に新設する条文がある。「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」「国防軍は(中略)国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」。

 今回の法案と自民党の改憲草案をセットにしてよく考えたい。もうすぐ6月15日。55年前の「60年安保闘争」を知る人には忘れられない日だ。このときの一方の主役は、安倍晋三首相の祖父にあたる故・岸信介氏(当時首相)だった。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド