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金曜時評

街の顔も守りたい - 編集委員 増山 和樹

 全国に820万戸といわれる空き家対策の特別措置法が、先月26日に全面施行された。自治体の権限が強まり、倒壊の恐れがあるなど、危険度の高い「特定空き家」と判断すれば、撤去や改修を勧告、命令できる。建物が残っている土地に適用されてきた固定資産税の軽減措置も対象外となる。

 空き家対策は劇的に進んだように見えるが、事はそう簡単ではないだろう。危険な空き家を撤去してもしなくても税金が同じなら、ぎりぎりまで放置する人が増える可能性がある。

 「特定空き家」と判定されれば、最後に待っているのは行政代執行による強制撤去だが、かかった費用を回収できる保証はない。県内の自治体職員の一人は「公金をつぎ込んで一般住宅にそこまですることが妥当なのか。費用回収だけでなく、公平性の問題も出てくる」と懸念する。

 何よりも心配されるのは、空き家が今後も増え続ける可能性があることだろう。総務省の調査では、平成25年10月現在、住宅総数の13・5%だが、特措法の効果が期待通りに表れなければ、さらに増えることになる。課題に対処するためにも、空き家を空き家でなくすのが最良の策である。

 屋根が落ちそうな家でも、街並みの一角を形成している。住民や通行人の安全確保は当然だが、更地が増えれば街の顔が変わることもあるだろう。空き家を積極的に活用しようとする自治体が増えているのは歓迎したい。

 豊かな農村風景が残る明日香村は、平成21年に空き家バンク制度をスタートさせた。要綱の趣旨には、定住促進や都市住民との交流拡大に加え、「地域の景観保全を推進するため」と書かれている。26年度末までの空き家登録は35件。賃貸や売買など23件の契約が成立した。

 いずれも改修費用は借り主が負担したが、村は本年度から、リフオーム補助を大幅に拡充、昨年度までの20万円から最大100万円に引き上げた。登録奨励金制度も設け、一定期間登録すれば3万円が支給される。担当者は大学との連携も考えており、空き家の改修で学生が活躍する日が来るかもしれない。

 空き家バンク制度は平群町や生駒市などでもスタートしている。人の暮らしによって生まれた地域の魅力を未来に受け継ぐためにも、制度の充実と広がりを期待したい。

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