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金曜時評

試される党「維新」 - 編集委員 辻 恵介

 大阪市を廃止し、五つの特別区を新設する「大阪都構想」への賛否を問う住民投票は、17日投開票され、わずか1万741票差で否決された。

 「二重行政の解消」などをめぐる賛成派、反対派双方の主張に対して、どちらの主張が真実なのか最後まで判断に迷った末に、時間切れで現状維持を選択した市民が多かった、ということではないか。

 特に高齢者らにとっては、各区の税収や財源の差によって、行政サービスの低下が身近なものになる、といった不安が強かったのだろう。近くにあった役所機関が遠くなれば、若者のように簡単にはいかない。「足」の問題は切実である。

 加えて、大阪市音楽団、文楽協会などの諸団体への補助金削減問題や、裁判沙汰にもなった組合への対応など、当事者にとっての難問をぶつけて、力関係で押し切ろうとする姿もまた、何度も報道されて、特別区の“未来”への不安材料の一つになったように思えてならない。いかに「子や孫の世代のために都構想による改革が必要」と言われても、現実を優先するのは、致し方ないことだろう。

 橋下徹市長は、12月までの市長任期を全うした上での政界引退を表明。さらに江田憲司代表も辞任し、19日に松野頼久氏が維新の党の新代表となった。素早い対応とはいえ、“大樹”であった橋下氏が表舞台から去ろうとしている今、組織的には、先行きの不透明感も漂う。

 さて、県内に目を向ければ、5人の県議が誕生した奈良の「維新の党」は、18日の県議会議長・副議長選では、早くもカギを握る存在となった。4月の県議選で同党は共産党と共に5議席を獲得して第二党となり、政党・会派の勢力図は様変わりし、運営体制も一変した。

 県議会正副議長選に当たっては、維新からは議員報酬や議員定数の削減、行財政改革の提案などがなされたという。今後、同党県議らが一枚岩となって、公約に掲げた改革などを実行できるかどうか、新勢力の行動力に注目が集まる。

 “橋下丸”は、12月18日の市長任期満了日をもって去りゆくことになる。きのう21日には、中央の新執行部体制も決まり、新しいスタートを切った。

 県議選で同党が得たのは5万票超。その重みをかみしめながら、そして、今回当選の3人を含む6人の市議(推薦候補1人含む)らも、票の重みをかみしめながら、地方政治にどう貢献していくか、組織力と個々人の力量が試されていく。

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